最新記事

右派

トランプ次期大統領とともに躍進する右派ニュースサイト「Breitbart」

2016年11月18日(金)15時50分
田中善一郎(メディア・パブ)

<米大統領選の過程で、トランプの躍進とともに、成長したのが右派ニュースサイト「Breitbart」。会長は、トランプ陣営の選対本部責任者だったスティーブン・バノン。そして、欧州にもこの流れを拡大させようとしている>

トランプを応援し、過激な記事で躍進

 右派ニュースサイトの「ブライトバート・ニュース」(Breitbart News)が、NY Times、CNN、Fox Newsといったエスタブリッシュメント・メディアを打ち負かした。このように自慢げに勝利宣言をうたい上げる記事を、自らのフェイスブック・ページに投稿した。

BreibartNYT20161111-thumbnail2.png

図1 Breibartのフェイスブック・ページ。「Breitbart Beats NY Times, CNN, and Fox News for Election Day Facebook Engagement」という見出しの記事が、11月10日に投稿されていた

 メディア分析会社NewsWhipが、米大統領選の開票日(11月8日〜9日)に、主要ニュースサイトを対象に選挙関連記事のエンゲージメント数(いいね!数+コメント数+シェア数)を計数した。その結果によると、確かにBreibartの総エンゲージメント数が、CNN、BuzzFeed、NY Times、Fox Newsを上回っていた。反エスタブリッシュメントを旗印にしたトランプ氏が勝ったように、同氏を強く支持してきたBreibartもエスタブリッシュメント・メディアを負かしたのだと、叫んでいるのだ。

会長は、トランプ陣営の選対本部責任者のスティーブン・バノン

 Breibartは過激な右派ニュースサイトなので、大統領選でもトランプ氏を応援していた。さらに今回の選挙では、Breibart Newsのスティーブン・バノン(Steven Bannon)会長が8月中旬にトランプ陣営の選挙対策本部最高責任者に任命されたこともあって、トランプ氏とBreibartの関係は密着していたと言える。Huffington Postの記事によるとバノン氏は「最も危険な政治フィクサー」と言われており、選挙対策の責任者に就いた彼はトランプ氏に過激な言動を再開させ、それが功を奏して勝利に至ったと見られている。

【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者
【参考記事】alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか

 選挙運動中には、トランプ氏の過激な言動に合わせて、Breibartは過激な記事を発信してきた。それらの記事内容がファイスブックやツイッターのソーシャルメディアで拡散することになった。今年の6月ころには、Breibartの政治関連ニュースがソーシャルメディアで最も話題になるようになってきた。NewsWhipの調査でも、図2に示すように、Breibartの政治記事が最も多くの(フェイスブックのエンゲージメント数)と(ツイッターのシェア数)を獲得していた。

PoliticalContentTop10NewsWhip.png

(ソース:NewsWhip)
図2 ユーザー・リアクションが多い政治記事を発信しているニュースサイト。今年の5月13日から6月13日までの1か月間に投稿した政治記事が、ニュースサイト別に(フェイスブックのエンゲージメント)および(ツイッターのシェア)をどれくらい得たかを示している

 これまでインターネット上でも、NYTimes、The Hill、CNN、Guardian、Washington Post、Politico、WSJなどの政治関連記事が影響力を発揮し、いわゆるエスタブリッシュメント層にもよく読まれている。逆にBreibartのような偏ったニュースメディアはエスタブリッシュメント層にほとんど相手にされなかった。政治に関心の高い人たちに利用されている政治ニュース・アグリゲーターmemeorandumでも、Breibartの記事はあまりキュレーションされていない(掲載数ランキングで現在は35位)。ところが、エスタブリッシュメント層にほとんど無視されていたBreibartが、フェイスブックやツイッターのSNSでは最も注目されている政治系ニュースサイトに躍り出ているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中