最新記事

ヘルス

自殺に失敗し顔を失った少女の願い――「何が起きてもそれは一時的なことだと信じて。物事は良くなっていくから」

2018年08月17日(金)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

顔面移植手術を受けるケイティ・スターブルフィールド Cleveland Clinic-YouTubeより

<銃口を自らに向けて死のうとした少女は、滅茶苦茶な顔とともに生還した。顔面移植手術を受けた彼女は今、2度目の人生を生きている>

世界で行われている顔面移植はわずか40回。アメリカ史上、最も若い患者となったケイティ・スターブルフィールドはその、39人目だった。

ケイティの物語の始まりは2014年3月25日に遡る。米CNNによると、当時18歳だったケイティはライフルを手に取り自ら人生を終わらせようとした。ミシシッピ州の自宅の浴室から銃声が響き、兄のロバートが駆け付けた。そして彼女は生き残った。以前の面影すらないまでに滅茶苦茶になった顔で。その1カ月後にはオハイオ州にあるクリーブランド・クリニックに行き着き、同院として3例目の顔面移植患者になろうとしていた。

katie-yt-002.jpg
明るく美しい少女だった Cleveland Clinic-YouTubeより

katie-yt-001.jpg
移植手術前の様子 Cleveland Clinic-YouTubeより

ケイティが移植手術を受ける候補者として待機リストに載るまでに、2年を要した。そこにたどり着くまでの評価プロセスはとても厳しい。同院は顔面移植手術の成功実績があるため、数十人もの患者が手術を望んでいる。だが、選ばれることは非常に稀なのだ。

患者の心理も大きな要素

「(顔面移植手術は)解剖学の観点からだけではなく、物理的、生物学的、心理学的な立場からみて全ての条件を満たさなければならない。そうすると適合する患者はほんのわずかになってしまう」と、ケイティを担当したクリーブランド・クリニックの外科医、ブライアン・ガストマン博士は語る(タイム誌)。

一度は自ら命を絶とうとしたケイティは、いかにして心理的評価基準をパスしたのだろうか。

「事が起きた当時彼女はとても若かったし、稀に見る軽率な決心だった。慢性のうつ病ではなかったようだ」それでも、心理的な評価はかなり厳しかったとガストマン医師は加えた。

ケイティの両親ロブとアレシアは住み慣れたミシシッピ州を離れ、ケイティのいるクリーブランドに来て一緒に過ごした。当初は、市内にある一家の友人の家に泊まっていたが、数カ月後には病院の向かいにある、病気の子供とその家族が利用できる滞在施設ドナルド・マクドナルド・ハウス(RMH)に引っ越した。そして彼らはいつしか、施設で1番長い住人になった。引っ越しから、実に4年が経とうとしていた。

「彼らがいなければ、これほどまでに長い行程は実現できなかっただろう」ドナルド・マクドナルド・ハウスについてこう語るロブの言葉には、ケイティの治療に際し、長い道のりのなかで途方もない数の人々に助けられたことへの感謝が滲む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…

  • 2

    解剖学者「セルライトは消せない」と断言...悪いイメ…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    最重要は「2度洗い」⁈ SNSで話題のヘアケア「本当の…

  • 1

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 2

    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…

  • 3

    メーガン妃の「狂気的なオーラ」が注目を集める...そ…

  • 4

    酔った勢いで彫った「顔のタトゥーは似合わない」...…

  • 5

    見落とされがちな「女の子のADHD」15の徴候とは?

  • 1

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 2

    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    ルイ王子の「お行儀の悪さ」の原因は「砂糖」だった.…

  • 5

    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ暗殺未遂

特集:トランプ暗殺未遂

2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃