最新記事

大学

教職員や卒業生の子供が「合格しやすい」のは本当?

高校生が東大を蹴って海外へ!? 世界トップクラスの大学が集まるアメリカで期待される6つの学生像(2)

2015年12月28日(月)15時25分

平等ではない? 期待される学生像の第3は「自己管理能力やマルチタスク処理能力に長けた人材」であり、第4は「伝統の継承者と破壊者」。伝統継承のため、教職員の子女や同窓生一家の出身者を優遇する「レガシー枠」がある OJO_Images-iStockphoto.com

 今、新しいタイプのアメリカ留学ブームが起きていると、本誌ウェブコラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」でお馴染みの在米ジャーナリスト、冷泉彰彦氏は言う。グローバル化の潮流を背景に、日本の優秀な高校生が「アイビーリーグ」の8校をはじめとするアメリカの一流大学を志望する、全く新しい動きが起こっているのだ。

 実は冷泉氏は、1997年以来、ニュージャージー州にあるプリンストン日本語学校高等部で進路指導にあたってきた。プリンストンやコロンビア、カーネギー・メロンなど多くの名門大学に高校生を送り出してきた経験をもとに、『アイビーリーグの入り方――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)を上梓した冷泉氏。アメリカの高等教育の仕組みから、秘密のベールに包まれた「アイビーリーグ入試」の実態、厳選した名門大学30校のデータまでを1冊にまとめている。

 アメリカの各大学では「アドミッション・オフィス(Admission Office=入試事務室)」という組織が入試の実務を担っている。日本の「AO入試」は簡易型の選考というイメージが出来上がってしまっているが、それとは全く違い、AOは高度な専門職だと冷泉氏は説明する。

 これまで3回、本書の「Chapter 1 志望校をどうやって選ぶのか?」から一部を抜粋したが、それに続き「Chapter 3 入試事務室は何を考えているのか?」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。アメリカの大学では、どんな学生が求められているのだろうか。

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『アイビーリーグの入り方
 ――アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』
 冷泉彰彦 著
 CCCメディアハウス

※第1回:これまでと違う「アメリカ留学ブーム」が始まっている はこちら
※第2回:アイビーに比肩する名門のリベラルアーツ・カレッジがある はこちら
※第3回:アメリカの女子大には「上昇志向の強い」女性が集まる はこちら
※第4回:米大学がいちばん欲しいのは「専攻が決まっている学生」 はこちら

◇ ◇ ◇

期待される学生像「自己管理能力」

 アメリカの大学が重視するのは「実行力」です。

 別に机上の学問、研究のための研究を軽視しているわけではないのですが、大学というのは「社会に有為な人材」を送り出すところだという意識は相当に強いわけです。

 そのために、ビジネスの世界でサクセスしそうな「潜在能力」が重視されます。そこには、学力も入ってくるし、コミュニケーション能力やリーダーシップの経験といったものも入ってくるでしょう。

 ですが、大学が重視している「潜在能力」というのは、そうした漠然とした人物像だけではありません。もっと具体的な問題として「自己管理能力」があります。この「自己管理能力」ですが、宿題の締め切りに遅れないとか、大学の願書締め切りに願書一式を間に合わせるというような「締め切り厳守」ということが一つあります。ですが、それだけではありません。

 もっと大きな概念として、「同時並行的に多くのプロジェクトを進行させ、それぞれについて期日までに成果を出す」という能力、つまり「マルチタスク処理能力」とでも言うものを、大学は非常に重視していると考えられます。

 どうして成績とテストの点数だけでなく、スポーツや課外活動の成果を求めるのかというのも、実はこの点に理由があります。

 例えば、進学実績の高い学区の公立高校に通っている高校4年生で、名門大学に出願すべく「目一杯のスケジュールを入れている」ような場合、11月の大学出願時点で「同時進行的に何をやっているのか」を列挙してみましょう。

1.高校では主要な科目は3年生までに修了しているものの、依然として「多変数微積分」「AP 統計学」「AP アメリカ政治」など宿題の多い科目を履修、テストの直前には相当に勉強しなくてはならない。

2.選択科目として「オーケストラ」を取ってチェロを弾き、学校に三つあるうちの最高ランクである代表オーケストラのトップを務める。同時に学校のオーケストラの世話役として、活動資金集めのボランティア、コンサートの企画も担当。

3.そのチェロの腕前が落ちないように、週1回専門家の指導を受けている。

4.学校外の州南部高校生の代表オーケストラの楽員にもなっていて、コンサートへ向けて定期的な練習に参加している。

5.スポーツは運動部のサッカーに入っていて、学校の代表選手。練習は月曜から金曜の放課後に2時間、土曜の午前中にも3時間。秋はシーズンなので、2カ月半のシーズン中に約10回の遠征試合と、5回のトーナメント戦があり、アウェーの場合の帰宅は午後8時から9時。

6.その他に、週末には語学学校通い、もしくは定期的に病院やEMS(救急隊)でボランティア。

 という感じでしょうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、アルジャジーラ記者を殺害 ハマスのリー

ビジネス

EXCLUSIVE-ソフトバンクG、ペイペイの米上

ワールド

イスラエル首相、新たなガザ攻撃「かなり早期に完了」

ビジネス

アングル:欧州の古い発電所、データセンター転換に活
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 3
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中