最新記事
中国経済

中国政府、GDPの76%に膨れ上がった地方政府の債務「見ぬふり」限界に 解決へ本腰か

2023年8月8日(火)11時16分
ロイター
人民元紙幣のイメージ

中国政府は7月に地方政府の債務問題を解決するため「一連の措置」を講じると約束した。写真は人民元紙幣のイメージ。2021年6月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

中国政府は7月、地方政府の債務問題を解決するため「一連の措置」を講じると約束した。具体的には特別債の発行、債務交換、国有銀行による借り換え支援などに加え、これまで毛嫌いしてきた中央政府予算に手を付ける策にも踏み込みそうだ。

中央政府はかねて、経済の要である省と市に高い成長目標を課してきた。しかし長年にわたる過剰なインフラ投資、土地売却によるリターンの急減、新型コロナウイルス対策費の増大などで膨れ上がった地方政府の債務は今や、最大の経済リスクとなっている。

政府指導部は7月、地方政府の債務軽減を支援すると宣言した。詳細こそ示さなかったが、地方債務のデフォルト(不履行)が連鎖して金融セクターを混乱させる恐れを憂慮していることがうかがえる。

中国共産党指導部は4月、地方債務の「厳格な管理」を要求していたが、エコノミストは7月のメッセージは4月よりも建設的だと指摘する。政府は問題解決に向けて早急に資金を投じる必要性に気付いたようだと言う。

中央政府は長年、地方政府が自ら問題を解決するよう求めてきた。今回の姿勢転換は事態打開への大きな突破口となるかもしれない。

中国財経大学のグオ・ティアンヨン教授は、「地方の債務問題は複雑で、責任を取りたくない、と言って済ませられるものではない」と言う。

政策顧問2人によると、中央政府による関与の詳細は今後の議論で決まる。投資家は、詳細を見て中央政府の決意のほどを見極めることになるだろう。

中央政府のジレンマ

地方政府の債務は2022年に92兆元(12兆8000億ドル)と、国内総生産(GDP)の76%に達した。2019年の62.2%から急増している。

この一部は、地方政府がインフラ整備のために設立する投資会社、融資平台(LGFV)が発行したものだ。国際通貨基金(IMF)は、LGFVの債務が今年9兆ドルに達すると予想している。

中央政府としては、支援しなければ経済成長と社会の安定が大きく揺るがされる恐れがある一方、支援すればさらに野放図な支出を後押しするリスクがあり、ジレンマを抱えている。

政策顧問の1人はロイターに、「何らかの原則を設ける必要がある。全ての債務を中央政府が引き受けるわけではない。そんなことをすればモラルハザード(倫理観の欠如)を招きかねない」と語った。

政策顧問はそうしたリスクを避けるため、金融機関、地方政府、中央政府、社会全般が負担を分け合う形を示唆した。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中