最新記事

中国経済

中国の金融市場自由化、株価急落で大きく後退

強引な市場介入を進める政府に中国内の投資家からも批判の声

2015年7月10日(金)18時48分

7月9日、中国は金融自由化を着実に進めていたが、先月から始まった株式市場の急落でそうした歩みが後退している。人民銀、北京で昨年5月撮影(2015年 ロイター/Petar Kujundzic)

[上海/香港 9日 ロイター] - 中国は金融自由化を着実に進めていたが、先月から始まった株式市場の急落でそうした歩みが後退している。中国指導部は2013年、資産価格の決定で市場に「決定的な」役割を担わせると約束。ただ、今では株式市場に対する前例のない介入を余儀なくされている。

ガベカル・ドラゴノミクス(北京)のアナリスト、アンドリュー・バトソン氏は「なりふり構わない介入は、改革に向けた政府の決意の信頼性や実行力に疑念が生じさせるだろう」と指摘する。

例えば、今年3月には株式新規公開(IPO)手続きの改革が打ち出されたが、需給悪化を恐れる政府はこのほど、複数の企業にIPO計画を中止するよう指示した。

また、証券各社は政府の意向に従い、総額1200億元(190億ドル)を株式購入に充てると発表。これは証券各社の海外展開に向けた資金も損なうことになる。

パイプ役の香港も打撃

中国市場に海外から資本を呼び込むためのパイプ役を担う香港も打撃を受けている。昨年11月には上海と香港市場の株式相互取引が始まったばかりだ。

ハンセン指数<.HSI>は4月の高値から16%下落。香港取引所<0388.HK>の株価下落率はその2倍強に達している。

香港取引所の経営陣はこれまで、深セン株式市場との相互取引、債券や商品の相互取引といったその他の中国関連プロジェクトに期待感を示していた。

香港取引所株を保有するある投資家は「出来高の落ち込みや、中国の市場改革がストップする可能性が意識され、香港取引所の株式に売りがかさんでいる」と話す。

「健全な市場なら介入不要」

MSCIは先月、ベンチマークとなるエマージング・マーケット・インデックスに中国A株を採用するのを見送ると発表。A株市場の自由化やアクセス性への懸念が背景となった。

実際に自由化やアクセス性は後退。中国証券監督管理委員会(証監会)はこのほど、持ち株が5%以上の株主を対象に向こう6カ月間、株式売却を禁止する措置を発表した。

証監会にコメントを求めたが、回答はなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=

ビジネス

NY外為市場=ドルまちまち、対円では24年12月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中