コラム

「ステルス増税」と、低所得層・子育て世帯支援の拡充...英政府が目指す矛盾した未来

2025年11月26日(水)21時11分
貧困対策と財政規律に揺れるイギリス

ロンドンのスーパーマーケット(2024年9月) EYEPRESS via Reuters

<低賃金層の可処分所得を確保しつつ、使用者側の負担を上乗せする構図の予算。さらには自動的に税収増につながる「ステルス増税」批判も>

[ロンドン発]財政難と低成長に苦しむ英国のレイチェル・リーブス財務相は11月26日、下院で秋の予算演説を行う。300億ポンド規模の財源不足を埋めるための増税と生活費危機に対処する低所得層支援の拡充を両立させる内容になっている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(11月25日付)などが報じている。

来年4月から全国一律の法定生活賃金(21歳以上の最低賃金)を4.1%増の時給12.71ポンドに引き上げる。18〜20歳の引き上げ幅は8.5%だ。低所得層の実質所得を増やす措置だが、接客サービス業界は「税やコスト増の負担に耐えられない」と反発している。

リーブス氏が低賃金層の可処分所得を確保しつつ使用者側の負担を上乗せする構図が再び浮き彫りになっている。野党・保守党は「逆に若者の雇用が奪われる」と批判を強めている。秋季予算の中核に位置付けられるのが個人所得税控除額の凍結延長だ。

名目賃金が伸びても税収増につながる「ステルス増税」

名目賃金が伸びると自動的に税収増につながるため「ステルス増税」と言われる。与党・労働党は当初「働く人々に負担を強いる」と、この政策に否定的だったが、財源確保の必要性から方針転換。凍結延長は年間100億ポンド規模の増収につながり、財源不足の3分の1を埋める。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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