ニュース速報

ワールド

イスラエルとハマスの衝突激化、死者双方で40人

2021年05月12日(水)14時24分

 5月11日、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザからのロケット弾発射が相次いだことを受け、11日未明もガザ地区への空爆を継続した。ガザ地区南部で撮影(2021年 ロイター/Ibraheem Abu Mustafa)

[ガザ/エルサレム 12日 ロイター] - イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突は、11日夜から12日未明にかけて激しさを増した。パレスチナ側では、空爆が始まった10日以降35人が死亡。イスラエル側の死者は5人となった。

イスラエル軍が12日未明までガザに数百発の空爆を行う一方、ハマスなどパレスチナ武装勢力はイスラエルの商都テルアビブやベエルシェバに向けて多数のロケット弾を発射した。

ガザでは、イスラエル軍の空爆により13階建ての居住ビルが倒壊。未明になっても空爆は続き、地元住民によると空爆で家屋は揺れ、空は明るく照らされた。

イスラエルはハマスの情報機関幹部数人を空爆で殺害したと発表した。ロケット弾の発射場やハマスの事務所や指導者の自宅なども攻撃したという。

ガザ空爆には戦闘機80機が出動し、国境の戦車部隊を増強するために歩兵と装甲車を展開した。

イスラエルの政治指導者と軍部は「数十人」の過激派を殺害しハマスが使用していた建物を攻撃したと明らかにした。ガンツ国防相は「数百回」の空爆を行ったとし、「建物は崩壊し続ける」と語った。

ガザの保健省によると、死者のうち10人が子どもで1人が女性だった。

イスラエルでは、70キロ超にわたる沿岸部や南部の地域で、住民が爆発音の中で避難したり地面に身を伏せるなどした。テルアビブではロケット弾攻撃を警告するサイレンが鳴り響いた。

テルアビブ近郊のロードではロケット弾が車に命中し、2人が死亡。イスラエルメディアによると、一人は7歳の少女だった。

ハマスは、ベエルシェバとテルアビブに210発のロケット弾を発射したと明らかにした。

イスラエルとハマスの衝突としては2014年にガザで起きた戦闘以来の激しさで、国際社会は懸念を表明、事態の沈静化を呼び掛けている。外交筋によると、国連安全保障理事会は12日に情勢を協議する。

国連で中東和平を担当するTor Wennesland氏は「直ちに攻撃を停止せよ。全面的な戦争に向けて激化しつつある。全ての指導者が緊張緩和に責任を持つべきだ」とツイッターで訴えた。

<重い代償>

暴力が直ちに収まる兆しは見られない。イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスとイスラム聖戦は重い代償を支払うことになる」と指摘。

ハマス側は、最初の行動を起こすかどうかはイスラエル次第だと述べた。ハマスの最高指導者ハニヤ氏は、イスラエルがエルサレムとアルアクサ・モスクに火をつけ、炎はガザにまで及んだと述べ「この結果はイスラエルに責任がある」と非難した。

同氏はカタールとエジプト、国連が冷静な対応を求めてきたと明らかにした。その上で、イスラエル側が事態をエスカレートさせたいのならパレスチナ側は準備ができており、攻撃を停止したければ応じる用意があるというのがイスラエルへのメッセージだと語った。

アラブ連盟はイスラエルによるガザ空爆を「無差別で無責任」と非難し、エルサレムにおける事態の「危険なエスカレート」の責任はイスラエルにあるとした。また、暴力の拡大を食い止めるため、国際社会に早急な対応を求めた。アラブ連盟加盟国には、ここ1年でイスラエルとの関係を改善してきた国も含まれる。

米ホワイトハウスはロケット攻撃を非難し、イスラエルには自衛のための正当な権利があるとしつつも、エルサレムは共存の場所でなければならないと指摘し、イスラエル側に圧力をかけた。

国務省のプライス報道官は双方に自制を促した。「イスラエルとパレスチナで命が失われたことは極めて遺憾だ。犠牲者をなくすために鎮静化を強く求めている」と述べた。

外交筋などによると、事態収拾に向けた水面下での取り組みを阻害する可能性があるとして、安保理による公式声明の作成を遅らせようとしている。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ地区最大都市ガザ市に地上侵攻 国防

ワールド

米、自動車部品に対する新たな関税検討へ 国家安保上

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ビジネス

米8月製造業生産0.2%上昇、予想上回る 自動車・
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 8
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 9
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中