ニュース速報

ワールド

アゼルバイジャン民族紛争激化、ロシアとトルコ巻き込む対立懸念

2020年09月29日(火)07時45分

旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る紛争は、事態が悪化すればロシアとトルコを巻き込んだ地域紛争に発展する恐れがある。写真はアルメニアに抗議するトルコ在住アゼルバイジャン人ら。イスタンブールで7月撮影(2020年 ロイター/MURAD SEZER)

[エレバン/バクー 28日 ロイター] - 旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘は28日、一段と激化し、双方がロケット弾などで攻撃を続ける中、少なくとも55人が死亡した。

事態が悪化すれば、アルメニアと防衛協定を結んでいるロシアとアゼルバイジャンのトルコ系住民を支援するトルコを巻き込んだ地域紛争に発展する恐れがある。

ナゴルノカラバフ当局によると、アゼルバイジャンの攻撃により28日にナゴルノカラバフの兵士53人が死亡した。27日には31人が死亡、約200人が負傷したとしている。

アゼルバイジャン当局は28日に一般市民2人が死亡したと発表。27日には5人が死亡、30人が負傷した。アゼルバイジャン軍の負傷者については公式な情報はない。

ナゴルノカラバフ指導者のアライク・アルトゥニアン氏は記者会見で「これは生きるか死ぬかの戦争だ」と述べた。

アゼルバイジャンでは27日の戒厳令発令に続き、この日は部分的な軍隊動員が宣言された。アルメニアとナゴルノカラバフでも27日に戒厳令が敷かれ、アルメニアでは18歳以上の男性の出国が禁止されている。

クライシス・グループの南コーカサス地域担当シニアアナリスト、オレーシャ・バルタニヤン氏は「1990年代の停戦以降、このような戦闘は発生しなかった。全ての前線で戦闘が行われている」と述べた。

その上で、ロケット弾などによる攻撃が行われていることで、一般市民が巻き添えになる危険性が増しており、事態悪化阻止に向けた外交努力が困難になる恐れがあると指摘。「大勢の死傷者が出れば、事態の抑制は極めて難しくなり、トルコもしくはロシアが介入する全面的な戦争に発展するのは必至だ」と述べた。

こうした中、ロシアは双方に即時停戦を求めた。

トルコのエルドアン大統領は、アルメニアに対し直ちにアゼルバイジャンから撤収するよう要請。ナゴルノカラバフ問題に決着を付ける時が来たと述べた。

英国のジョンソン首相はこの日、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、この問題について協議。英首相府は、英国がナゴルノカラバフを巡る紛争の収束を呼び掛けているとした。

アルメニア議会は、アゼルバイジャンによるナゴルノカラバフへの「全面的な軍事攻撃」を非難。アルメニア外務省の報道官は、トルコがアゼルバイジャンにドローンや戦闘機を提供し、トルコの軍事専門家が戦闘に加わっていると主張した。アゼルバイジャンはこれを否定、トルコは現時点でコメントしていない。

ただ、エルドアン大統領やトルコ政府高官はこれまでに、アゼルバイジャンへの支援を表明している

1990年代のナゴルノカラバフ紛争では、アルメニアとアゼルバイジャンの双方で大勢の難民が発生した。

新たな衝突を受け、石油・天然ガスの重要輸送路に当たる南コーカサス地方の政情不安定化を巡る懸念が再燃している。

*内容を追加しました

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、中東鎮静化へ活発外交 外相が欧独サウジと相次

ワールド

トランプ氏、ボンディ司法長官解任 エプスタイン疑惑

ワールド

マクロン氏、武力による海峡開放「非現実的」 イラン

ビジネス

FRB、不確実な経済に対応可能 中東戦争で見通し困
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 3
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トランプ関税が米国民に与える「破産」の苦しみ
  • 4
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 7
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 8
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 9
    自国の国旗損壊を罪に問うことの深刻さを考える
  • 10
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中