ニュース速報

ワールド

中国、2020年国防費は前年比6.6%増 30年ぶり低い伸び

2020年05月23日(土)06時31分

 5月22日、中国政府は、開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で2020年の予算案を公表した。安全保障上のリスクの高まりを警戒し、国防費は前年比6.6%増の1兆2680億元(1781億6000万ドル)とした。写真は北京で22日撮影(2020年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

[北京 22日 ロイター] - 中国政府は、22日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で2020年の予算案を公表した。安全保障上のリスクの高まりを警戒し、国防費は前年比6.6%増の1兆2680億元(1781億6000万ドル)とした。ただ、伸び率は30年ぶりの低さとなった。

李克強首相は「国防・軍の改革を深化し、兵站(へいたん)・機材面の支援能力を強化するとともに、防衛関連の科学技術の革新的発展を促進する」と表明した。

また「国防動員システムを改善し、軍と政府、軍と人民が、揺るぎない結束を維持することを確実にする」と述べた。

豪マッコーリー大学のアジア太平洋安全保障学教授ベーツ・ギル氏は、今年の国防費の伸びについて、逼迫気味の予算状況や経済分野の課題を優先する必要性などを反映した、均衡のとれたものだと指摘。それでも6.6%という伸び率は決して低いわけではなく、今年の国内総生産(GDP)成長率見通しを恐らく大きく上回るとの見方を示した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて米中関係は一段と冷え込んでいる。

関係筋がロイターに明らかにしたところによると、中国国家安全省は最近の内部報告書で、新型コロナの流行を受けて中国に対する敵意が強まっていると指摘し、米国との間で武力衝突に発展する可能性もあると警鐘を鳴らした。

シンガポール防衛戦略研究所(IDSS)のリサーチフェロー、コリン・コ―氏は、中国政府は国家安全保障上の脅威に直面しているとの考えから、緊急に防衛力を強化する必要があると感じていると指摘。「特に国防予算の数字が表している軍の近代化の後退は、内外に誤ったシグナルを送る可能性がある」と語った。

中国は国防費の内訳を公表しておらず、外交筋や海外の専門家の間では、実際の国防支出は公表されている額をはるかに上回るとの見方が多い。

菅義偉官房長官は22日午後の会見で、中国の国防予算は「長きにわたって高い伸び率が継続している」とし、「透明性を高めることが望まれる」との見解を示した。中国当局との「人的交流や対話を通じ、透明性を高めるよう働きかけていきたい」と述べた。

米国防総省の報道官は、「研究開発や国内の安全保障、海外からの軍需品調達など主要な支出項目のいくつか」が予算から省略されていると指摘。「中国の動向は、その意図と軍事費の双方の透明性が大幅に欠けているという点で懸念される」と述べた。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン再び9万ドル割れ、一時6.1%安 強ま

ワールド

プーチン氏、2日にウィットコフ米特使とモスクワで会

ビジネス

英住宅ローン承認件数、10月は予想上回る 消費者向

ビジネス

米テスラ、ノルウェーの年間自動車販売台数記録を更新
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 8
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中