ニュース速報
ビジネス

FRB「利下げ急がず」、関税の影響に適切に対応 議長が議会証言

2025年02月12日(水)05時56分

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、上院銀行委員会で証言し、利下げを急ぐ必要はないと再表明した。2024年11月撮影(2025年 ロイター/Ann Saphir)

[ワシントン 11日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、上院銀行委員会で証言し、利下げを急ぐ必要はないと再表明した。経済は「総じて堅調」で失業率は低く、インフレはFRBの目標である2%を依然上回っていると述べた。

今回の議会証言は1月のトランプ政権発足後初めて。パウエル議長は証言の冒頭、過去2年間で目標に向けて「大きく前進した」としつつも、インフレはなお目標を0.5%超上回っていると指摘。「政策スタンスの調整を急ぐ必要はない。政策の制約を過度に速く、もしくは過度に大幅に緩和すれば、インフレを巡る進展が妨げられる可能性がある」という見解を改めて示した。

また、物価安定と最大雇用という「二大責務双方に対するリスクに注意を払っている」とした上で、「われわれが直面するリスクと不確実性に対応する上で政策は十分に適切」とした。    

FRBは昨年9月から12月にかけて3会合連続で合計1%ポイントの利下げを実施した後、1月の会合で金利据え置きを決定。今後の利下げ時期についてはほとんど手掛かりを与えず、トランプ政権の政策を見極めていく姿勢を示したが、パウエル議長のこの日の発言は、1月会合時の内容を踏襲するものだった。

<関税の影響に「思慮深く適切に対応」>

トランプ大統領は就任以降、主要貿易相手国のメキシコとカナダに対する関税措置を表明した後に発動を延期したほか、10日には鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の追加関税を適用する大統領令に署名。FRB当局者にとって具体的な分析やモデル化を行うための材料が乏しい状況が続いている。

パウエル氏は質疑応答で、「自由貿易に関する標準的な考え方は論理的に今でも意味をなしている」と述べると同時に、「関税政策について判断やコメントを行うことはFRBが果たすべき役割ではない」と言及。「われわれはその影響に対し思慮深く適切に対応する役割を担っている」とし、「関税、移民、財政、規制などを巡る全ての政策が複合的に絡み合っている。これらを理解するよう努めていく」と述べた。

また、物価上昇は起こり得るとしながらも、どの財にどの程度の関税がかけられるかに大きく左右されるとし、「消費者への影響がほとんど及ばないケースもあれば、大きく及ぶケースもある」と語った。

<市場は年内1回の利下げを予想>

市場はFRBは年内に1回、0.25%ポイントの幅での利下げを実施すると予想。利下げ継続が引き続き見込まれているものの、予想される幅は縮小している。

ネーションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、経済の多くの分野で状況が変化していることを踏まえ、今年は下半期に1回のみ利下げが実施されると予想。パウエル議長の証言を受け、「トランプ政権の関税、移民、規制、財政を巡るマクロ経済政策の変更を巡る大きな不確実性を踏まえ、FRBは物価情勢と労働市場の推移を見極めようとしている」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中