ニュース速報

ビジネス

アングル:海外勢の日本株買い拡大、円高進行なら巻き戻しリスクも

2022年12月06日(火)16時06分

 海外勢の日本株買いが拡大している。新型コロナ禍からの経済再開や大型経済対策で来年の成長率が高まる見通しであるほか、米著名投資家による買い増しも刺激となっている。写真は東京証券取引所で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

平田紀之

[東京 6日 ロイター] - 海外勢の日本株買いが拡大している。新型コロナ禍からの経済リオープン(経済再開)や大型経済対策で来年の成長率が高まる見通しであるほか、米著名投資家による買い増しも刺激となっている。ただ、足元では円高による業績圧迫リスクが高まっており、ポジション巻き戻しへの警戒感も強い。

<欧州勢が中心か>

海外投資家は11月、第4週までに現物株と先物合計で約1兆9000億円を買い越した。海運や商社、銀行、保険など配当利回りの高い銘柄が相対的にパフォーマンスが良く、物色対象になった可能性がある。銀行や保険は米金利が低下する中でも買われる場面があった。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが、国内大手商社株の保有比率を引き上げたことも、海外投資家の日本株買いを刺激した可能性がある。「バフェット氏は、業績が良く株主還元も手厚い日本の商社を選好しているのではないか」(国内証券)との見方がもっぱらだ。

経済協力開発機構(OECD)が11月22日に公表した世界経済の成長率では、日本の経済成長率は22年の1.6%に対し、23年は1.8%と、日本と中国だけが伸びが高まる予想となっている。コロナ禍からのリオープンが欧米よりも遅れたことや、大型の経済対策が追い風だ。

地域別にみると日本株買いの中心は欧州勢だ。10月は北米が476億円の売り越しで、アジアは969億円の買い越し、欧州は3079億円買い越した。「欧州のグローバルファンドは、投資先の国別アロケーション(配分)を決めていったん買いを入れると2カ月ほど買い続ける傾向がある」(大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト)という。

<120円なら増益危うしとの見方>

ただ、ポジションの反転リスクも警戒されている。7月も海外勢は約1兆7000億円買い越し、7─8月の日経平均は2万5000円台後半から2万9000円台前半に上昇した。だが、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ継続警戒などから、その後に一転してポジションは巻き戻され、9月に2万5000円台後半に逆戻りした。

足元の円高傾向が日本株投資のリスクとなる恐れもある。円高は、日本株投資をしている海外投資家にとって為替評価益をもたらすが、長期投資家にとっては、円高による為替評価益よりも、円高による企業業績悪化を懸念しやすいという。この点で、JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾グローバル・マーケット・ストラテジストは「日本株には下振れリスクがある」とみている。

TOPIX500企業の今期想定ドル/円レートの平均は約133円。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、実勢レートが近づいてきていることから為替差益による業績上振れへの期待が後退し始めていると指摘する。実勢レートが120円前後まで円高が進むと今期の増益は危うくなるという。

前週は円高が進む中、日経平均が下落した。「いったん買った海外投資家が、また売っている可能性がある」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)という。

ゼロコロナ政策への懸念から、中国株の代替として香港株が売られる一方、日本株が買われていた可能性があるが、足元では中国のゼロコロナ政策緩和の期待が高まる中、「日本のリオープンより新鮮味がある上、ポテンシャルも高い」(三浦氏)として、日本株から香港株へと海外勢の資金が再シフトするリスクも警戒されている。

(平田紀之 編集:伊賀大記)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏

ビジネス

中国、人民元バスケットのウエート調整 円に代わりウ

ワールド

台湾は31日も警戒態勢維持、中国大規模演習終了を発

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中