ニュース速報

ビジネス

米経済、FRB支援策を解除する段階でない=クリーブランド連銀総裁

2021年06月23日(水)02時15分

6月22日、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、各国中央銀行が新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた危機に対応するために導入した低金利政策や債券買い入れ策などが、将来的に金融安定に対するリスクとして台頭する恐れがあるとの考えを示した。写真は2019年7月、ロンドンで講演するメスター氏(2021年 ロイター/Marc Jones)

[ワシントン 22日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は22日、米経済は連邦準備理事会(FRB)が景気支援的な金融政策の引き揚げを開始すべき時点に達していないとの見方を示した。ただその時が来れば、FRBは2008─09年の金融危機時と同様のアプローチで、必要に応じて調整すると述べた。

メスター総裁は記者団に対し、市場はFRBが前回にどのような対応をしたか知っているため、FRBは前回の対応を出発点とし、必要に応じて調整すると表明。ただ「現時点では、必ずしもそれほど軌道を外れる必要はないと考えている」と述べた。

これに先立ち、ノルウェー中央銀行が主催した金融政策に関する会合では、各国中央銀行が新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた危機に対応するために導入した低金利政策や債券買い入れ策などが、将来的に金融安定に対するリスクとして台頭する恐れがあるとの考えを示した。

「金融政策枠組みに金融安定への配慮を明確に組み込み、非伝統的な金融政策で金融安定リスクが増大するリスクがあるとの認識を示す必要がある」とし、中銀は金融リスクが高まった時に緩和的な政策を引き揚げられるよう「エスケープ・クローズ(逃避条項)」を用意しておく必要があると指摘。「金融政策の目標達成に向けて導入された措置は、多くの場合は金融安定に補完的な役割を果たすが、時に金融安定リスクを助長させることもあると、金融政策担当者は明確に認識しておかなければならない」と語った。

ただFRBの現行政策にこうしたリスクがあるか、もしくは自身に金融引き締めの用意があるかについては明らかにしなかった。

メスター総裁は中銀による資産買い入れについて、「投資家のリスクに対する感度が低下することで脆弱性が作り出されたり、市場の機能に影響が及ぶことで金融政策の伝達メカニズムにも影響が出たりする可能性がある」と指摘。緩和的な政策を維持すると確約することでレバレッジが積み上がる恐れもあると述べた。

その上で「マクロ経済と金融安定が整合しなくなる時が来ると認識し、金融政策のフォワードガイダンスを発表する際に金融安定に対するリスクも考慮し、金融政策の枠組みをより明確にする必要がある」と語った。

このほか、低金利環境と高リスク選好に対応し銀行資本規制を再調整する必要があるとも指摘。ノンバンクを一段と緊密に監視する必要があるとの考えを示した。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファーウェイ、チップ製造・コンピューティングパワー

ビジネス

中国がグーグルへの独禁法調査打ち切り、FT報道

ビジネス

ノボ、アルツハイマー病薬試験は「宝くじ」のようなも

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中