ニュース速報

ビジネス

米雇用、5月は予想外の改善 就業者250万人増・失業率13.3%

2020年06月06日(土)02時47分

5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比250万9000人増となり、失業率も予想外に改善した。写真は5月18日、マイアミで撮影(2020年 ロイター/Marco Bello/File Photo)

[ワシントン 5日 ロイター] - 米労働省が5日発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が一転増加に転じ、失業率も予想外に改善した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が招いた景気低迷からの回復には時間がかかる可能性があるものの、底打ちの兆しを示した。

失業率は13.3%と、戦後最悪だった4月の14.7%から改善。市場予想は19.8%だった。

非農業部門雇用者数も前月比250万9000人増と、エコノミスト予想の800万人減に反しプラスに転じた。4月は約2070万人減と、1930年代の大恐慌(グレート・ディプレッション)以降で最大の落ち込みを記録していた。

MUFGのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「パンデミックとそれに伴うリセッションの峠は越えた」としつつも、「前回の景気後退期と同様、景気が回復し、十分な雇用を生み出すまでに数年かかるだろう」と述べた。

トランプ大統領はツイッターに「実に素晴らしい雇用統計だ。トランプ大統領は良い仕事をしている(ジョークだが事実だ)!」と投稿し、11月大統領選での再選を視野に雇用情勢の回復を自身の功績とした。

しかし、就業者数はなおコロナ危機前の水準を約2000万人下回る。失業者数は2月以降9.8%ポイント上昇し、失業者数は1520万人増加している。

また、5月の就業者増加分の5分の2をパートタイム就業者が占めたほか、白人層の失業率が14.2%から12.4%に低下する一方、黒人層では16.8%に小幅上昇するなど、回復が一様でない様子も示された。

労働省・労働統計局(BLS)は、雇用統計調査で回答者が「一時解雇による失業」ではなく、「一時解雇中だが就業」と回答するなど集計上の問題があることを指摘。こうした問題を除くと、5月の失業率は約16%に達していた可能性がある。

エコノミストの間では、失業率が5月にピークに達したものの、11月の大統領選時点でなお10%超の水準に高止まりしているとの見方が大勢。

現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は21.2%と、前月の22.8%から低下した。

米政府が打ち出した中小企業向け給与保護プログラム(PPP)が雇用情勢の好転に寄与したかどうかを巡り懐疑的な声も聞かれる。

元米連邦準備理事会(FRB)理事でシカゴ大学教授のランダル・クロズナー氏は「特定の業種や多くの企業は消失し、それに伴い多くの職も失われる」と述べた。

5月は業種別ではレストランなどの外食関連の就業者数が140万人増と、4月は540万人減から持ち直した。

建設は46万4000人増加し、4月の減少分のほぼ半分を取り戻した。

教育、小売業、製造、金融サービスなどの就業者数も軒並み増加した。

一方、政府部門は58万5000人減。新型コロナ対応で州・地方政府の予算が圧迫されていることを反映した。

情報、鉱業、輸送関連も減少した。

労働参加率は60.8%と、73年以来の低水準となった前月の60.2%から上昇した。

経済の雇用創出能力を見極める指標とされる人口に占める雇用者の比率は52.8%と、過去最低となった前月の51.3%から改善した。

時間当たり平均賃金は前月比1%減と、前月の4.7%増からマイナスに転じた。前年比では6.7%増と、前月の8%増から鈍化した。週労働時間は34.7時間。4月は34.2時間だった。

*情報を追加します。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ブラウン大銃撃、当局が20代の重要参考人拘束

ワールド

中国、「持続可能な」貿易促進 輸出入とも拡大と党幹

ワールド

中国、鉄鋼に輸出規制 1月から許可制に

ワールド

米政権のAI州規制阻止、政治・法律面で執行にハード
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中