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焦点:米テスラに賭けたソロス氏、他の投資家は追随するか

2018年05月19日(土)09時20分

 5月16日、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEO(写真)が新たな資金調達を必要としているなら、方法はありそうだ。2月撮影(2018年 ロイター/Joe Skipper)

[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が新たな資金調達を必要としているなら、方法はありそうだ。

米著名投資家ジョージ・ソロス氏は15日、3500万ドル(約39億円)相当の同社シニア転換社債を第1・四半期中に取得したことを明らかにした。

転換社債は発行時に定められた値段で社債から株式に転換することが可能。投資家はテスラの株価が上昇すれば利益を手にできるし、株価が上がらなくてもリスクから身を守れる。

テスラの株価は昨年386ドルの高値を付けた後は下げており、16日は286.48ドルで取引を終えた。

マスク氏は年内の追加調達の必要性を否定している。しかし市場関係者は懐疑的で、低価格セダン「モデル3」の製造目標を達成できない状態が続けば調達は必至とみている。

テスラの昨年のジャンク(投資不適格級)債発行と見比べた投資家からは、ジャンク債の再発行よりも転換社債の方が魅力的だとの声が上がっている。

今年テスラの2022年償還転換社債を購入したガーバー・カワサキ・ウエルス・アンド・インベストメント・マネジメントのロス・ガーバーCEOは「素晴らしい手段だ」と話し、買い増す考えを示した。

投資家はテスラのモデル3の製造能力や同社の自動運転技術を搭載した車の事故に気をもんでおり、テスラの社債も値下がりしている。

しかしイートン・バンス・マルチセクター・インカム・ファンドの共同ポートフォリオマネジャー、ヘンリー・ピーボディー氏は「テスラの保有現金が今のペースで減り続ければ、今後3四半期以内の資本調達が避けられない」と述べ、その場合同社が転換社債を発行する公算が大きいとした。

テスラからのコメントは得られていない。

テスラの株価が現在程度の水準を保った場合、ソロス氏など同社の転換社債を買った投資家は期限を迎えたときに額面での償還が可能で、転換社債の購入価格が安ければ利益が得られる。

米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、ソロス・ファンド・マネジメントが購入したのは2019年3月償還の転換社債。この社債は転換価格が359.87ドルで、16日終値を上回っている。

テスラの株価が転換価格を超えれば、ソロス氏は転換社債をテスラの普通株9万7000株強と交換するだろう。投資の妙味はこちらの方が大きい。

いずれにせよ、転換社債を購入した投資家は当面、年0.25%の金利収入を手にできる。

ヘッジファンドも転換社債を好む。転換社債は企業の株式を空売りする際のリスク調整に利用できるからだ。

一方、ジャンク債の場合は最も望ましいシナリオでも額面での償還止まり。テスラの財務が悪化してもほとんど身は守れない。

ただ、テスラにとって転換社債の方が良い選択肢ではあっても、ジャンク債に対する優位性はそれほど大きくないとの見方もある。ブラウン・アドバイザリーの債券ヘッド、トーマス・グラフ氏は「テスラの現状を考えれば転換社債の方に大いに分がある」と述べ、起債の成功を予想したが、自身は購入を見送る考えを示した。

(Kate Duguid記者、Trevor Hunnicutt記者)

ロイター
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