ニュース速報

米、イラン原油全面禁輸へ 日本などへの適用除外を5月に撤廃

2019年04月23日(火)08時19分

[ワシントン 22日 ロイター] - 米政府は22日、イラン産原油の禁輸措置について、日本を含む8カ国・地域に対する適用除外措置を打ち切ると発表し、5月1日までに輸入を全面停止するよう求めた。撤廃後にイランから原油を輸入すれば米国の制裁措置の対象となる。

米政府に適用除外の継続を求めていた一部の国にとっては予想以上に厳しい決定となった。

米国は昨年11月、トランプ大統領がイラン核合意から離脱したことを受けてイランの原油輸出に対する制裁を復活。ただ、日本、中国、韓国、インド、台湾、トルコ、イタリア、ギリシャの8カ国・地域については6カ月間、制裁の適用除外を認めていた。

米国の決定を受け、イラン石油省の関係筋は、こうした事態に準備はできていると述べた。またイランメディアによると、精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」の海軍司令官は、ホルムズ海峡の使用を禁止された場合、海峡を閉鎖すると警告した。[nL3N2242PF]

制裁復活後、イランの原油輸出は日量250万バレルを超える水準から同100万バレルを下回る水準まで減少した。

ポンペオ国務長官は記者会見で、米政府の目標はイランの原油輸出をゼロにすることだとし、5月1日より後に猶予を与える計画はないと表明。「今後はいかなる除外措置も認めない。(イランの原油輸出の)全面的なゼロを目指す」と述べた。

ホワイトハウスは、原油市場への「適切な供給」を確実にするために石油輸出国機構(OPEC)加盟国のサウジアラビア、およびアラブ首長国連邦(UAE)と協力していると表明した。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で、米国のイラン産原油に対する制裁措置が「完全に実施」されることになるが、サウジを含むOPEC加盟国は世界的な原油市場への供給を巡り、イランの減少を補う以上のことができるとの考えを示した。

米国務省エネルギー資源担当次官補のフランク・ファノン氏は、世界の石油市場での供給量などが適切になるようサウジアラビアが「積極的な措置」を行っていると述べた。[nL3N22431V]

サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、米国の決定を受けてサウジは「原油市場の動向を注視している」とし、市場の安定を保つために他の産油国と協力していく姿勢を示した。増産にコミットすることは控えた。[nL3N2242LE]

北海ブレント先物は1バレル=74ドルを超え、昨年11月以来の高値を付けた。米原油先物も一時65.92ドルまで上昇し、昨年10月以来の高値を付けた。[nL3N2243C1]

イタリアやギリシャ、台湾はすでにイラン産原油の輸入を停止しているが、中国やインドにとっては全面停止はより困難となる可能性がある。

中国外務省の耿爽報道官は定例記者会見で、中国は一貫して米国の一方的な対イラン制裁に反対しており、中国とイランの二国間協力は法にのっとったものだと述べた。[nL3N2241FR]

トルコも米国の決定に反発し、チャブシオール外相は「一方的な制裁や、近隣諸国と関係を構築する上での押し付けは受け入れない」と強調。地域の平和や安定につながらないとの考えを示した。

韓国の聯合ニュースは外務省筋の話として、韓国政府が適用除外の延長に向け米国と交渉しており、韓国の立場を示すため5月の期限までにあらゆる努力を継続する方針だと報じた。

インド政府は公式なコメントを控えた。

ワシントンの日本大使館の報道官は、日本政府としてコメントを発表する予定はないとした。ただ、日本政府関係者によると、河野太郎外相とポンペオ国務長官の19日の会談でイラン問題が協議されたという。今週末の安倍晋三首相の訪米時にも取り上げられる可能性がある。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、25日に多連装ロケット砲の試射視

ビジネス

4月東京都区部消費者物価(除く生鮮)は前年比+1.

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

バイデン氏、半導体大手マイクロンへの補助金発表 最
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中