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対談

「失敗」からすぐに学んだエリザベス女王...「イギリス王室の生命力」とは?

2025年05月07日(水)11時05分
君塚直隆+佐伯順子(構成:置塩 文)

王室のメディア活用

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佐伯 確かに、現地の報道でも、これまでの戴冠式とは異なる宗教やジェンダーの多様性が強調されていました。

あわせて、現地で印象的だったのは、イギリスの様々な都市において、銅像で示されるヴィクトリア女王の権威に加えて、没後もエリザベス2世女王がいまだ大きな存在感と人気を保っていることです。

王室というよりも、彼女自身の、モナーク(君主)としての個人的な資質のなせるわざでしょうか。

君塚 エリザベス女王は何があっても動じない盤石の女王でした。ただ、ダイアナの死に対する対応には珍しく失敗し、王室への批判が強まり、5年後の在位50周年式典(ゴールデン・ジュビリー)は盛り上がりに欠けました。

しかし、エリザベス女王の一番の強みは失敗からすぐに学ぶことです。女王の仕事や王室・王族の様子を知らせる広報活動を熱心に展開した結果、王室の支持率は上がり、2012年の在位60周年式典(ダイヤモンド・ジュビリー)の頃には、「女王は大変な務めを果たしている偉い人だ」ということが国民にしっかりと伝わっていました。

さらに10年後の2022年の在位70周年記念式典(プラチナ・ジュビリー)は、イギリス史上初めてのことですし、コロナ明けということも重なり、さらなる盛り上がりを見せました。残念ながらその3カ月後に女王は亡くなってしまいますが。

佐伯 少なくとも2023年、ケンブリッジの街にはプラチナ・ジュビリーをお祝いする柄のバスも走っていました。こうした王室への支持の背景として、確かにみずからメディアを通じて市民に語りかけるメッセージの影響力がありますね。

エリザベス2世の父・ジョージ6世のラジオによるスピーチは映画『英国王のスピーチ』でも知られていますが、1952年にエリザベス2世が始めたクリスマス・メッセージもそうですし、節目節目に市民、国民を鼓舞するメッセージを直接発信するところにノブレス・オブリージュの責任感が見られるように思います。

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