※"A picture is worth a thousand words."――1枚の写真には千の言葉の価値がある。世界の今を鋭く捉えるドキュメンタリーから、感性を刺激する芸術的なアプローチまで。連載「Picture Power "世界を物語る"写真の力」からお届けます。

ドキュメンタリー写真の役割は「正確な記録」だ。しかし、英ブリストルのマーティン・パー財団で9月17日〜12月20日に開催される写真展『ダーク・テールズ:イギリスのドキュメンタリー写真とゴシック』は、それが持つもう一つの大きな力を提示する。

戦後80年の間にイギリスで撮られた、衰退する産業や息苦しさを覚える家庭の光景、不穏な夜──写真家たちが捉えたのは被写体の姿だけではなく、18〜19世紀のゴシック小説家たちが言葉で紡いだような不安で不気味でありながらどこか魅惑的な空気感だ。            

AIの台頭によって写真の役割や社会的信頼が揺らぐなか、「この激動の時代は、ゴシック的想像力を通してドキュメンタリー写真を見つめ直す好機だ」と本展キュレーターのアイザック・ブリーズは言う。主に財団が所有する5000点以上の写真から選ばれた作品たちは、単なる事実の記録にとどまらず、見慣れた日常や現実の奥底に潜む人々の不安や社会の陰鬱さを微妙なニュアンスで可視化している。

写真が醸す美しい闇の魅力に触れる時、私たちはその新たな真価に出会う。

マーティン・パー財団:世界的写真家集団マグナム・フォトのマーティン・パーが2014年に設立。イギリスとアイルランドをテーマとする写真家を支援し、展覧会やワークショップを開催。写真集や作品、自身のアーカイブを収蔵・公開し、写真の魅力を伝えながら、地域の多様な文化を映し出すことを目指している

Photographs from the exhibition  “Dark Tales: British Documentary Photography and the Gothic”, on display at Martin Parr Foundation from 17 SEPT - 20 DEC 2026

【第1039回】

Picture Power 世界を物語る 写真の力
 
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