母方の祖母の台所の白壁には、写真がびっしりと飾られていた。ジャフナ系タミル人の写真家アビ・チニアは、1998年、7歳だった頃の出来事を鮮明に覚えている。

それまで母国だと思い込んでいたニュージーランドから、父の故郷であるマレーシアに来たばかり。チニアの父は一族の男性で初めて西側の国に渡り、苦難の末に一家でマレーシアに戻ったところだった。

写真の一枚一枚に、チニアは目を凝らした。祖母は母に、タミル語で話しかけている。私は一体、何者なのか──そんな疑問が、スリランカから国外に移住したタミル人の歴史と記憶を写真でたどるチニアの活動の原点になった。

タミル人のディアスポラ(離散)の物語は、1世紀以上前のスリランカ・セイロン島北部ジャフナから始まる。同島最古の民族の1つであるセイロン・タミル人は、英植民地時代、マレー半島やシンガポールなど帝国各地での労働に動員された。チニアの父方の祖父と母方の曽祖父も1900年代初頭に海を渡った。

彼らは移住先で、葛藤しながら新たなアイデンティティーを築いていった。同時に、故国スリランカで26年に及んだ内戦に心を痛め続けた。

内戦の勃発はスリランカのタミル人の政治意識を根底から変え、80〜90年代には移住と亡命の新たな波が起きた。その行き先にはニュージーランドも含まれていた。

チニアはスリランカから国外に移住したタミル人を訪ね歩き、自宅で撮影。ポートレートと彼らの保管する古い写真と共に、ルーツをひもといていった。そこには、同じ島、同じ祖先、そして同じ不屈の魂で結ばれた彼らの歴史と物語が映し出されている。

撮影:アビ・チニア ファインアート、ドキュメンタリー写真家。スリランカ・タミル系のマレーシア人両親を持ち、マレーシアからニュージーランドへ移住。移民コミュニティーの文化的アイデンティティー、肌の色による差別、移民が世代に与える影響をテーマにした作品は、ニュージーランド国立図書館などに所蔵されている

Photographs by Abhi Chinniah

Auckland Festival of Photography presented Abhi Chinniah's exhibition "Walking The Path' in the 2024 edition, and she has exhibited in two Festivals independently: 2021 with "Migrant's Path"  and again in 2026 with "Nirantharam (நிரந்தரம்)"

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