今年、国内で起きたデモについては、どのようなジャッジを下しているのか。「第3章 治安情勢 5:大衆運動」の項目では、国会前デモに参加する市民を国会前に極力集まりにくくする措置をとったことなどはもちろん触れずに、「国会議事堂周辺において、規制中の警察官を殴打するなどの暴行を加えたことから、警察は、公務執行妨害罪で男女計13人を現行犯逮捕した。平和安全法制の成立を受けて、抗議行動に取り組んでいた大衆団体等は、28年も引き続き、平和安全法制の廃止に向けた取組等を展開していくものとみられる」と、やっぱり悪者扱い。
沖縄の住民運動についても同様。「国土交通大臣が、10月27日、沖縄防衛局の不服申立てを審査し、取消しの執行停止を決定した。反対派は、これに反発し、抗議行動の盛り上げを図っている。28年も引き続き、大衆団体等は、普天間飛行場の移設を捉え、反戦・反基地運動を活発に展開するものとみられる」と、さらりと終わらせている。
巻末にあるグラフ資料「右翼関連事件の検挙状況」で、昨年までの過去3年の検挙人数を遡ってみると1654人、1643人、1824人。一方、「極左事件の検挙状況」は15人、36人、31人とある。人数の多少ですべてを測るべきではないとはいえ、回顧部分にしろ展望部分にしろ、「右」「左」の団体への注視が均等扱いで並んでいる。「極左暴力集団」について、「組織の維持・拡大を図るため、引き続き、大衆運動や労働運動に介入するものとみられ、その一方で、調査活動に伴う違法行為や『テロ、ゲリラ』等を引き起こすおそれがある」とまとめた。
その一方で、在特会のようなヘイトスピーチ集団については「極右暴力集団」ではなく「右派系市民グループ」という形容にとどめ、「徒歩デモ等により自らの主張を訴えるものとみられ、その過程で、反対勢力とのトラブルから生じる違法行為の発生が懸念される」としているのには、違和感を覚える。特定の人々を突き刺す罵詈雑言を並べる彼らの活動を前にしても、警察の一義は「反対勢力とのトラブルから生じる違法行為の発生」の警戒にある。パワーバランスがおかしい。
この資料は毎年代わり映えしない箇所も多い資料なのだが、今年はISの動きが活発になり、何よりも国民からの直接的な憤怒があちこちの現場で投じられたことを受けて、その変化が盛り込まれてはいる。しかし、相変わらず「極左暴力集団」にこだわるなど、時代錯誤と思えるところも少なくない。いずれにせよ、「テロに屈しない」などのワンフレーズを繰り返しているだけでは見えてこない部分、そしてそのフレーズを繰り返すことで隠そうとした本音の部分が、少しばかりは見えてくる資料である。
さて、今年の本連載は少々早めに今回で店じまい。2016年もよろしくお願いします。