650万人の死に影響する大気汚染

 さらに、化石燃料を使うことによって生じる大気汚染も深刻になっている。IEAが今年6月に発表したリポート「エネルギーと大気汚染(Energy and Air Pollution)」によれば、大気汚染は全世界で年650万人の死に影響しているとされる。肺がん、呼吸疾患などを引き起こす。そのうち外気の大気汚染によって350万人、屋内のかまどや暖房などによって300万人が亡くなっている。石炭などを燃焼させることで、有害物資が出ることが一因だ。

 同リポートによれば、各国での改善はなかなか進まない。中国では、まだ大気が健康に悪い状況であるものの、ようやく少し改善しつつあるという。こうした大気汚染の面からも、化石燃料は使われなくなりそうだ。

 世界の流れは、温室効果ガスと汚染物質の排出という化石燃料の短所を許容しない社会になりつつあるのだ。

日本だけ化石燃料が目立って増えていく

 長期的視点で見ると、世界の化石燃料の使用は抑制され、特に先進工業国では抑制が進む。ところが日本では使用が増えそうだ。資源エネルギー庁が15年末に公表した資料によると、現時点で94基4180kW分の既存の石炭火力発電所がある。これらは次第に減らされる流れにあった。上記のように大気汚染、地球温暖化への配慮によるものだ。政府が2010年、石油石炭税を引き上げたことも影響した。

 ところが、状況は変わった。2011年の東日本大震災と東電の福島第一原発事故で、無計画に原発が止まった。さらに電力のシステム改革で、新規参入が奨励されることになった。

 同庁の資料によれば、石炭火力で47基2250万kW発電量の建設計画が浮上している。電力自由化によって新規参入した企業は建設費用の安い石炭火力を作ろうとしている。また原子力発電の再稼動が見込めないため、既存の電力会社も子会社などを通じて石炭火力の建設を検討している。

 日本の発電に占める石炭火力の割合は2015年に31%、天然ガスが26%だ。これをエネ庁は2030年に石炭を20%台に引き下げ、ガスを横ばいにしたい意向だ。しかし前述の調査会社ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンス(BNF)社は、石炭火力が4割程度に増えると見込む。BNFの日本担当アナリストであるアリ・イザディ氏は「先進国の中で化石燃料が目立って増えていくのは日本だけになりそうだ」と指摘した。

 日本の政策は、「雰囲気に流されて物事を進め、決めるべき問題を決めず先送りしてしまう」ことが頻繁に起こる。残念ながら、化石燃料の使用増加の問題も、こうした状況になりつつある。