そのうち、"How did @JustineSacco get a PR job?! Her level of racist ignorance belongs on Fox News. #AIDS can affect anyone!"(こんなジャスティン・サッコがどうやってPRの仕事を得られたわけ?! 彼女の人種差別と無知のレベルはフォックスニュース並だわ。エイズは誰だってかかるのに!)という非難のツイートが生まれ、それに刺激されて怒りのバリエーションも増えていった。

 次に登場したのが、その炎上を娯楽として喜ぶ人たちだ。

"All I want for Christmas is to see @JustineSacco's face when her plane lands and she checks her inbox/voicemail."

(飛行機が着陸して電話のメッセージをチェックするときのジャスティン・サッコの顔を見てみたい。クリスマスのプレゼントにほしいのはそれだけさ)

"We are about to watch this @JustineSacco bitch get fired. In REAL time. Before she even KNOWS she's getting fired."

(しめしめ、ジャスティン・サッコというビッチが解雇されるのをリアルタイムで見られるぞ。それも、本人が知る前にな)

という悪意に満ちたツイートもあふれた。

 私もこの事件を覚えているが、最初は「PR専門家にしてはツイートへの考慮が足りない」と呆れて憤り、「企業はもっとソーシャルメディアの使い方を社員に教育するべきじゃないだろうか?」と思った。だが、すでに何度も謝罪しているジャスティンに対する度を超えた悪意を目にするうちに居心地が悪くなったことは事実だ。

 ネットで「正義の味方」になるのは簡単だ。叩きやすい人を見つけて、正義の名のもとに制裁を与えればいいのだから。匿名のままでいれば、自分が公で処刑されるリスクを犯さずに攻撃できる。これほど鬱憤晴らしになる娯楽はないだろう。

 実際には他人を救う力がなくても、他人の人生を破壊するパワーは誰にでも持てる。それを使う「スーパーヒーロー」たちが蔓延しているのが今のインターネットの世界だ。

 ただし、この悪意のパワーは誰の中にも潜んでいる。気をつけていないと、自分自身も正義感を振りかざして他人を破壊するスーパーヒーローになってしまう。

 ジャーナリストで作家のジョン・ロンソンはそんな危機感を持って『So You've Been Publicly Shamed (English Edition)』(それゆえあなたはネットで晒された)という本を書いた。彼は、ジャスティンのようにネットで血祭りにあげられ、人生を破壊された人々を紹介し、私たち一般人の中に潜んでいる悪意とそれを増幅するネットの恐ろしさに警鐘を鳴らしている。