その後、アンミッシュが待ち望んでいた2度目の日本訪問は、結局2016年になってしまった。だが、とても密度の濃いものになる。フクシマからヒロシマの間の9つの都市(群馬県の富岡、福島県では相馬、南相馬、そして横浜、東京、愛知県の常滑、大阪、広島県の尾道、広島)を訪れ、計400キロものストリートや路地を意図的に彷徨(さまよ)った。
不思議なことに迷うことはなかったという。なぜなら、色鮮やかなサインや標識を道しるべとし、しばしばボディランゲージを使って、なんとか切り抜けていったからだ。全ては感覚に頼っていた、と彼女は話す。そして、この時にアンミッシュが感じた感覚こそ、彼女の作品の源になったのかもしれない。
実際、自分の作品を語るときに彼女はこう表現する。
「私の写真は『彷徨う』ということとすごくリンクしている。しばしば一人で一日中歩き回る。全身の感受性を研ぎ澄ませるために。何かが自分の周りに降りてきたときに、それを見逃さず、つかみ取るために。それが私の感覚であり私の写真への接し方だ」
2016年以降、彼女は毎年日本を訪れるようになっているが、「今は自分が日本で何をやりたいのか分かるようになってきた」と言う。「それは、『無常』の内なる感情や『わびさび』を探ること。そうしたコンセプトは私の考え、日常、付き合いの中にも存在している。そして、それこそが写真の真髄と深く関わっているのだと思う」
アンミッシュの作品が、グラッフィクデザイン的なテクニカルセンスだけでなく、しばしば幽玄的な『もののあわれ』を感じさせてくれるのはこのせいかもしれない。
今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Nadia Anemiche @rabbittears

※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由