<写真は独学で覚えた。被写体のほとんどは、猫と犬。詩的な感覚こそがエヴジェニヤ・ゴーアの最大の持ち味だ>

自分自身に対して自然体であることは、写真家にとって最も大切なことかもしれない。それは、誰かのために撮影する、あるいは、こう撮れば世間が気に入ってくれる、認めてくれると思って撮影する写真の対極に位置する。

むろん、後者も写真にとって重要な要素だ。人は社会との絡み合いで生きている。だがその被写体に、あるいはその写真を撮る世界に惚れ込んでいなければ、いくら才能のある写真家でも結局は飽きられてしまう。また、自分の成長が一定のところで止まってしまう。残念ながらそれは、インターネットとSNS の時代、写真界の悲しき傾向だ。

今回取り上げるのは、そんな中、自らの日常に絡みつくものを自然体で、気負いもなく一人の観察者として撮影し続けているカザフスタンの32歳女性、エヴジェニヤ・ゴーアだ。写真は独学で覚え、2006年から「Among the Worlds」というプロジェクトを継続している。

そのメインテーマは、彼女が常に興味を抱き続けているという、人間と動物の関係だ。被写体のほとんどは、猫と犬。とりわけ、ゴーアの日常的な環境に常に存在しているという猫である。ただし、大半は飼い猫ではない。彼女が「ホームレス」と呼ぶ、ストリートで生活している猫たちである。

ゴーアが写し出すホームレスの猫たちには、動物愛護活動家がしばしば意見広告などで社会に訴えかけるような、大きな悲壮感はない。かといって可愛いらしさを前面に押し出した写真でもない。すでに述べたように、ゴーアが、彼女の生活空間で接する猫などの動物を自然体で撮っているだけだ。

密かに掲げている裏のアジェンダ