<パステル調のトーンと静的で個性の消滅した人物たち。スロバキアの写真家マリア・スワーボワの生み出す得体の知れない世界観の魅力>
一般的にはコマーシャルな写真は低く見られがちだ。だが時には、ヴィジュアル性を超えた、得体の知れない世界観にはまってしまうこともある。
今回取り上げるスロバキアの写真家、マリア・スワーボワもそんな作品を生み出している1人。アカデミックなバックグラウンドは建築と文化財の修復だったが、その後、写真にフォーカスしはじめ、広告・ファッション写真を基軸にしながら、空間と人物の関係をテーマにプロジェクトを進めている29歳の女性である。
舞台となる空間の大半は、スロバキアがチェコスロバキアの一部だった社会主義時代の建築物、あるいは公共の場所だ。とりわけ、今年になって写真集も出されたスイミングプールのシリーズは、彼女のプロジェクトの中で最も大きく、彼女の名声を決定づけた作品でもある。
スイミングプール・シリーズには、大きな特徴が2つある。まず、色使いだ。透明感を持ったパステルの色調がほぼ常にその空間を覆っており、それが不可思議な落ち着きを与えてくれる。また、登場人物のスイミングスーツやキャップなどにしばしば使用されている白、赤、青の3色も、エレガントなアクセントの効果を作り出している。
もう1つは、作品空間の中に存在する人である。時に1人、あるいはグループであったりする。彼らはスローモーションの動画の中で、動きがぱたっと止まってしまったかのようで、またシンメトリーな感覚を持って非常に静的に配置されている。まるで何かの童話に出てくる機械仕掛けの人形のようで、個性など完全に消滅している。こうした要素がパステル調のトーンと重なって、見る者を異次元の世界に誘い出してくれるのである。
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