その後もidentity theftは増える一方だ。詐欺師の手に渡ったら、さまざまな場面でSSNが悪用されてしまう。
たとえば、金融関係。盗んだSSNで銀行口座を開いたり、クレジットカードを作ったりできる。小切手やカードで買い物したあと、請求書はSSNの持ち主、つまり被害者に届く。SSNが盗まれたことに気づくのはそれを見た瞬間のこと。「あら? 俺、車を買っちゃった? 運転免許もないのに?」とか、「あら、ジャスティン・ビーバーのコンサートチケット?」とか、ありえない買い物で初めて発覚するようだ。
また、毎年春には詐欺師が成り済まし確定申告をするのが恒例行事。勝手に住所変更手続きをし、税務署をだまして還付金を受け取るという手口だ。もちろん当該の還付金は被害者に届かない。また、年金の場合も、本人より先に申し込んで同様に住所変更し、給付を代わりに受け取るという手口がある。素早く手続きや申告を済ませる詐欺師のマメさにもびっくりするが、大変な被害だ。
医療関係でも詐欺が多い。病院で成り済まして治療を受けることもある。もちろん請求は被害者へ。さらに恐ろしいのは、被害者の治療歴が変わってしまうこと。たとえばアレルギーや血液型が記載されてしまったら本当に危険。
でも、これに限っていえば、日本はマイナンバー制度による危険性は増えないはず。日本では保険証に顔写真が載っていないから、もともと成り済ましのリスクにさらされている。安心だね!
identity theftに遭ったら、解決の責任は被害者にあるのも厄介だ。請求先、病院、銀行、政府などとやりとりしなければならない。解決するのに数年かかったりするらしいし、その間、ローンを借りたり、カードを作ったり、家を買ったりするのは大変困難になるという。
そこで立ち上がったのが、identity theftから守ってくれる会社。有名なのは、顧客を詐欺から守り、万が一詐欺に遭っても100万ドルの補償金を約束するLifeLock社だ。大胆な広告手法をとり、社長の顔写真とともに本人のSSNを堂々と看板やウェブサイトに載せた! 普段は考えられない、あまりにリスキーな行動だけど、それぐらい自社の保護サービスは安心できると社長は身体を張ったわけだ。
ちなみに、広告の効果が抜群だったのか、社長はこれまで13回も詐欺被害に遭っているという。どうやら自分すら守れていない様子。しかも広告の内容が虚偽だとされ、1200万ドルの罰金を科された。お前が詐欺師じゃん!
アメリカ政府も国民を守れているとはいえない。毎年数百万人ものアメリカ人が被害に遭っている。しかもそのSSNが悪者の手に渡るのが、政府のせいだったりすることも度々。日本でも6月に日本年金機構のパソコンから125万人分の個人情報が流出したよね。これもひどいけど、ここでもまた、先輩アメリカの方がすごい。7月に政府のデータベースから2100万人のSSNが盗まれた。
「どうしてくれるんだ」って? これが、何もしてくれないんだ。