今日はテレビ業界話を一つ。
アメリカのテレビドラマ業界にとって、今は放送シーズンのちょうど中盤(基本的にテレビドラマは1年のうち9月~5月に放送されるシリーズが多く、9月に始まるものもあれば、1~2月にようやく始まるものもあります)。9月頃から始まるシリーズはそろそろ終盤を迎え、1~2月から始まる後発組も今の時期には視聴者の間で「面白い」「今シーズンはイマイチ」といった評価が決まってきます。
でもテレビドラマ業界の人々にとっては、すでに来シーズンの新番組枠を競う「パイロット・シーズン」でもあります。新しいドラマが製作される場合、通常はまずパイロット版と呼ばれるテスト版のようなものが作られます。登場人物や配役、番組の雰囲気や大まかなストーリー設定が分かるような内容で、たいていはシリーズの第1話に該当するようなもの。
各局は毎年1~2月に、数ある番組案の中から有望そうな作品を厳選してパイロット版を発注します(ABCやNBCなど主要ネットワーク局はドラマ、コメディー合わせて20作品近く、ケーブル局はもっと少ない)。そして出来上がったものを見ながら、4月末頃までに来シーズンの新番組を決めるのです(最終的に選ばれるのはほんのひと握り)。
今年も1月に入ってからは、各局のパイロット版をめぐるニュースが連日飛び交い、ようやく各局のパイロット版企画が出揃った感じです。
今年の注目点は、大物ヒットメーカーが関わる企画が多いこと。とりわけ大物ぞろいなのがNBC。科学捜査班ドラマ『CSI』シリーズを生んだジェリー・ブラッカイマーは逃亡ドラマ『チェイス』、『LOST』『エイリアス』などを手がけたJ・J・エイブラムズはCIA捜査官の夫婦が主人公の『アンダーカバー』、『アリー・myラブ』のクリエーターを務めたデイビッド・E・ケリーは弁護士ドラマ『キンドレッズ』のパイロット版を製作することが決まっています。
NBCがこれほど力を入れる背景には、昨年から続く人気司会者ジェイ・レノをめぐる騒動があります。彼が昨年スタートしたNBCのゴールデンタイムの番組を2月で打ち切り、一度は降板した同局の深夜トーク番組に復帰したため、夜の番組枠(週5時間)が空くことに。NBCとしては騒動の痛手を挽回するためにも、視聴率のとれる新シリーズがほしいわけです。
とはいえ、いくら大物クリエーターの作品でもヒットするかどうかは未知数。人気がなければ数話で打ち切られることも(たった1話で打ち切られたシリーズもありました)。パイロット・シーズンを勝ち抜いても、さらに過酷な現実が待っているわけですが、そんな環境が飛躍を生むのかもしれません。
──編集部・佐伯直美