『オッペンハイマー』は歴史の半分しか語っていないが、ニューメキシコで起きた話を大々的に取り上げてくれた。おかげでトリニティやロスアラモスの人々が、自分たちの物語を語るチャンスができた。

「ひどい映画だ、自分は見ない、と地元の人たちは言うかもしれない」とゴメスは言った。「でも私は違う。これはすごい、きっとみんなが『トリニティ』や『ニューメキシコのマンハッタン計画』という単語で検索し始める。楽しみだわ」

それでもウィーラーには別な心配がある。ハリウッド映画の罠に、みんながはまってしまうことだ。「キリアン・マーフィー演じるオッペンハイマーの顔に浮かぶ苦悶の表情を見れば、彼が後悔の念に押しつぶされそうになっていることが分かる」と彼は言う。

「でも、そこが問題だ。一人の人間に罪を背負わせることで、他の人間は罪悪感から逃れられる。それでいいのか。アメリカという国は一貫して、マージナル(周縁的)なコミュニティーを無視し、差別し、破壊し続けてきた。科学の、あるいは経済の進歩のためと称して」

ウィーラーは続けた。「アメリカという国を偉大にした数あるプロジェクトのほとんどで、マージナルなコミュニティーが破壊されてきた。マンハッタン計画もトリニティの核実験も、その延長線上にある」

©2024 The Slate Group

ニューズウィーク日本版 創刊40周年 世界に映った日本の姿
2026年10月13日号(10月6日発売)は「創刊40周年 世界に映った日本の姿」特集。

復刻版の創刊号特集で読む日本の「これまで」と「これから」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます