アルトマンは21年3月、「ムーアの法則をあらゆるものに」と題する論文を発表した。冒頭で彼は「オープンAIで働くなかで、私は日々、来る社会経済的変化の大きさを実感している。公共政策が適切に対応できなければ、大半の人々の暮らしは今より悪くなるだろう」と述べた。

ムーアの法則とは「半導体の集積度は2年でほぼ倍増し、価格は半分になる」というものだ。アルトマンが言うようにこの法則をあらゆるものに適用できれば、「何十年にもわたって住宅や教育、衣服などあらゆるものの価格が2年ごとに半分になる」というわけだ。

アルトマンはコロナ禍の初め頃、イスラエル軍のガスマスクを着用していた。カリフォルニア州ナパにある農場を購入したり(アルトマンはベジタリアンだが、オーストラリア出身のプログラマーであり今年1月に結婚したパートナーは「牛好き」だそうだ)、サンフランシスコの高級住宅街に2700万ドルで家を購入したりした。

有名人の友人も増えた。デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグは21年に、彼のことをこう語っている。「つい最近できたばかりの、とてもとても親しい友達の1人。サムに会うのはアインシュタインに会うみたいな感じ」

オープンAIがGPTソフトウエアの利用権を企業に向けて売り始めるなか、アルトマンはAIによって変容する世界の到来に向け、いくつものサイドプロジェクトを練っていた。核融合発電の実用化を目指す新興企業ヘリオン・エナジーには、3億7500万ドルを投資した。可能性は高くないがヘリオンが実用化に成功すれば、アルトマンは世界で最も安価なエネルギー源の1つを支配できるようになる。人間の健康寿命を10年延ばすことを目標とするバイオテック企業レトロバイオサイエンスには、1億8000万ドルを投じた。

生体認証装置を使って世界中で人間の瞳の虹彩をスキャンするプロジェクト、ワールドコインを立ち上げ、1億1500万ドルを投資した。スキャンに応じた人の虹彩データは暗号資産(仮想通貨)ウォレットにひも付けされ、見返りに60ドル相当の仮想通貨が振り込まれる。

このプロジェクトは、AIから生じた2つの問題の解決につながる。人間とAIの境界線は今後ますます曖昧になるが、その判別が可能になる。オープンAIのような企業が吸い上げた資本の一部を人々に還元するのにも役立つ。

アルトマンのポートフォリオは、技術系ライターのジェイサン・サダウスキーによれば「都市国家を1つ築いて支配する」だけで満足しているらしいザッカーバーグとは違う。

むしろマスクのような野心家、「帝国主義的なアプローチ」を取る男のポートフォリオだ。「(アルトマンは)自分を世界にそびえ立つ超人、ニーチェ的な超人と見なしている」と、サダウスキーは言う。「アルトマンは人類を破滅に導く道具を作り、破滅から人類を救うだろう」

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「私は死となり、世界の破壊者となった」
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