去年、軍事政権から民政移管になったミャンマー。民政とは名ばかりで、どうせ軍事政権の看板の付け替えにすぎないだろうと思われていたのに、このところの民主化の動きには驚くばかり。大統領が民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏と会い、スー・チー氏が議会の補欠選挙に立候補することを認めたり、大量の政治犯を釈放したり、内戦が続いていた少数民族との停戦合意を結んだり、中国主導で進められていたダム建設を白紙に戻したり。

 テイン・セイン大統領の改革は果たして本物なのか。国際社会が注目する中、本誌日本版2月1日号は貴重な独占インタビューを掲載しています。

 インタビューした記者は、大統領に対して、「この国を変えようと思った動機は」と尋ねています。その答えは、「平和と安定、そして経済発展を実現したいという人々の希望が根底にあるからだ」というもの。

「これらを実現するためには、国内の政治パートナーと良好な関係を築くことが重要だ。だからわれわれはスー・チーと対話を始めた。私は彼女と会い、2人の間に理解が生まれた」

 ここで大統領は重要な発言をしています。スー・チー氏を「国内の政治パートナー」と呼んでいるのです。記者は、この発言に敏感に飛びつきました。「スー・チーが選挙で善戦したら閣僚に起用するか」と聞いているのです。過去の軍事政権はスー・チー氏を敵視してきました。たとえ選挙への立候補を認めても、「野党として認める」程度だろうと受け止めて当然ですが、記者は鋭く閣僚への起用の可能性を突いたのです。

 これに対する大統領の発言もまた、驚くべきものです。「現在の閣僚は全員が議会の承認に基づいて任命されている。彼女が議会の任命や承認を得たら、閣僚として受け入れることになる」と。

 なんとまあ、スー・チー氏が大臣になるかも知れない! 大変な発言を引き出しました。

 記者はまた、スー・チー氏にもインタビューしています。ここでも鋭い質問が。「将来、大統領になりたいか」と。

 これに対する彼女の返答は微妙です。

「そうは思わない。この国の大統領になりたいかどうか決断できる自由が欲しいとは思うが」

「大統領になりたいとは思わないが、なりたいと決断できる自由は欲しい」。日本の夕刊紙であれば、「スー・チー氏、大統領への野望隠さず」と書きたてるところでしょう。

 客観的に見て大変な特ダネでも、淡々と書いていく。記者の実力を見る気がします。