<聖エドワードの王冠をかぶった国王陛下に忠誠を──イギリス人にも意味不明で時代錯誤な式典の意味>

英国王の戴冠式(コロネーション)って何なの? イギリス人である筆者はこの数週間に何度か、外国出身の知り合いにそう質問された。話題になっている数々の奇妙な儀式は何なのか。「メイス(職杖)」という金色の大きな棒が出てくるのはなぜか。毎回、こんな感じなのか──。

実を言えば、私たちにも答えはさっぱり分からない。

イギリス人は時代錯誤的な変人だと思われたとしても、特に多くの英国民が時代錯誤に興じているような状況では当然だろう。イギリス人とは、歯並びの悪い歯でアナグマの煮込み料理を食し、古風な挨拶を交わす人々で、彼らにとって「運命の石」といった物体はハンバーガー並みに普通のものなのだ、と。

確かに、5月6日の英国王チャールズ3世の戴冠式については、詳細を知り尽くしているだろう歴史オタクや王室支持者がイギリスにはあふれている。それでも英国民の大半は、何もかもが意味不明な大騒ぎだという意見に同意するはずだ。

戴冠式の数カ月前から報じられてきた式典の内容は、まるでシュールな夢のようだ。戴冠式の舞台は、英王族の結婚式や葬式などが行われるロンドンのウェストミンスター寺院。式を執り行うのは、ちょっと地味なイギリス版教皇といった存在のカンタベリー大主教だ。ここまでは、それなりに納得できる。

だが連日、全国民が知っていて当たり前のように、ニュースで「献納の宝剣」といった名称が飛び交う状況となると......。

戴冠式では、長年のしきたりらしい「宣誓」や「塗油」や「即位」というプロセスの一環として、さまざまな品が姿を現す。

チャールズがかぶる純金の「聖エドワード王冠」は重さ約2.2キロ。「戴冠の椅子(聖エドワードの椅子)」に座り、権力や慈悲を象徴する「十字架の王笏(おうしゃく、君主の杖)」と「鳩の王笏」、およびキリスト教世界を象徴する「宝珠」を手にする。

ほかにも「俗界正義の剣」「聖界正義の剣」「慈悲の剣」「聖エドワードの笏」「職杖」「国剣」が続々登場。どれも特定のやり方で持たないと、神様のお気に召さない。ウェストミンスター寺院への入場を先導した十字架「クロス・オブ・ウェールズ」には、キリストがはりつけにされた十字架の一部という触れ込みの木片が組み込まれている。

戴冠式のクライマックスの1つである塗油で使われるのは、エルサレムで祝福を受けた聖油を入れた「アンプル」だ。ワシの形をしたアンプルのくちばし部分から注がれた聖油が、カンタベリー大主教によってチャールズの手などに塗布される。

これが本当にイギリスなのか