<天然ガスの宝庫である北極圏。そこで軍事的プレゼンスを強めるロシアに対し、アメリカも負けじと積極姿勢を見せている。もはや2022年以前の北極圏には戻れない理由とは?>

この1月、日中でも氷点下のいてつく演習場でアメリカ各地の州兵(連邦軍の予備役)が大規模な砲撃訓練を行った。

初めてのことではないが、今年はヨーロッパからラトビア軍の兵士も参加した。ロシアのウクライナ侵攻が始まって1年、北方でもロシアとの緊張が高まり、武力衝突に発展する恐れがあるからだ。

演習はミシガン州北部のグレイリングで1月20日から29日まで実施され、予備役を統括する陸軍大将ダン・ホカンソンが指揮を執った。

今のアメリカは北極圏の防衛態勢を一段と強化している、と語るのは米シンクタンク北極研究所のモルティ・ハンパートだ。

「第3次世界大戦への備えではないが」とハンパートは言う。「アメリカはロシアが基本的に敵性国家であり、北極圏でも牙をむく可能性があることを理解している」

NATOの一員であるノルウェーだけでなく、スウェーデンやフィンランドも、いざロシアとの対決という事態になればアメリカが支援してくれるものと期待している。そして米軍は、もちろんその期待に応えるつもりでいる。

今のロシアはウクライナ戦で手いっぱいに見えるかもしれないが、実は北極圏の軍備強化にも励んでいる。昨年末のCNNの報道によれば、新たなレーダー基地や滑走路の建設も確認されている。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、ロシアは北極圏でもハイブリッド戦術を駆使しており、ドイツ向けの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の破壊工作にも関与した疑いがある(ロシア側は否定している)。

アメリカ政府も昨年10月に、ロシアのウクライナ侵攻によって「北極圏の地政学的緊張」が高まり、「意図せぬ紛争の生じるリスク」が高まったと発表した。

北極圏は天然ガスの宝庫