北極圏は天然ガスの宝庫

それでもCSISは、北極圏におけるロシアの軍事的活動はもっぱら防衛的なものだとみている。

フィンランドとの国境に近いコラ半島のムルマンスクには原子力潜水艦の基地があるし、液化天然ガス(LNG)や石油精製の大規模工場もある。地球温暖化によって通年の航行が可能になりそうな北極海航路の防衛という目的もありそうだ。

だが、それだけではなく、北極圏におけるロシアの軍事力強化には攻撃的な側面もあるとCSISは指摘する。北極圏に接するカナダや北欧諸国などを牽制し、「可能性は低いが、あり得ないとは言えない」NATOとの全面対決に備えるためだ。

「死活的に重要なコラ半島の核戦力を守るためなら、ロシアはノルウェーやフィンランドへの限定的な侵攻に踏み切る可能性もある」。CSISは今年1月の報告書で、そう警告している。

それに、北極圏は今でも全世界のLNG生産量の約8%を占めている。だから経済的にも戦略的にも、ロシアの未来は北極圏における権益の維持に懸かっている。

北極圏の資源争奪で戦争が始まる可能性は低いとしても、よそで起きた紛争の火の粉が北極圏まで飛んでくるシナリオは十分あり得る。北極研究所のハンパートは言う。

「今となっては、もう2022年以前の北極圏には戻れない」

【動画】北極にある巨大なロシア軍基地に潜入