W杯優勝が悲願だけど

「15年以降に見られたような政治的な優先はなくなった。習近平(シー・チンピン)国家主席はサッカー好きで知られているが、少なくとも私は、彼がサッカーに言及するのを聞いた覚えがない」と、ドライヤーは言う。

クラブは地方政府や大手不動産会社、国有企業からの支援が「突然なくなった。サッカーを支援する政治的メリットがなくなったからだ」。

状況を悪化させているのは、CSLの試合が20年以降、基本的にほぼ無観客で行われていることだ。

短縮されたシーズンを完走するために、チームや関係者は感染対策のバブルに閉じ込められている。こうした現状を理由に退団する選手もいて、国際プロサッカー選手協会(FIFPro)は中国のクラブと契約しないように警告している。

「中国のサッカーは消滅寸前だ。死んだとは言わないが、深い冬眠状態であるのは間違いない」と、ウィルソンは言う。

「ホームスタジアムにファンがいないまま3シーズンを生き延び、サッカー界やリーグの発展にも大きな損害を与えないのは、世界のどこでもあり得ない」

一方で、サッカー以外のスポーツを通じた中国のソフトパワーの追求は急速に進んでいる。昨年の夏季五輪東京大会には08年の北京大会に次ぐ規模の選手団を派遣し、獲得メダルの総数はアメリカに次いで2位だった。今年の冬季大会は北京で開催された。

中国は18年に、25年までに8130億ドル規模のスポーツ産業を構築すると宣言。19年9月に国務院(内閣に相当)は「スポーツ強国建設綱要」を発表し、50年までの具体的な目標を示した。サッカーは引き続きその中心にいる。

国家スポーツ総局の李建民(リー・チェンミン)副局長は当時、次のように語っている。

「サッカーのような人気のあるビッグイベントの進展は、一般市民だけでなく国家の最高指導部にとっても最大の関心事であり、スポーツ強国を築くためにこれらのイベントのレベルを向上させなければならない」

「W杯を開催し、いつか優勝することは、世界をリードするスポーツ強国の建設というわれわれの野心に沿うものだ」

ただし、まずはW杯の予選を勝ち抜かなければならない。アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国共催となる26年大会は、アジアの出場枠が増える。予選突破を目指して「軌道修正をするために、やるべきことはたくさんある」と、ドライヤーは言う。

「中国はアジアのトップチームの1つになれるはずだ。今はまだ、はるか遠いところにいるが」

From Foreign Policy Magazine

【動画】「リアル少林サッカー」と言われた2006年W杯ポルトガルvsオランダ戦