兵士や警察官とその家族、軍政が任命した自治体首長や職員などは国営メディアと主に接しているが、インターネットのSNSなどを通じて実状に関する情報はある程度得ているとされる。

その証拠という訳ではないが、兵士や警察官が職場を離脱して国境を越えて隣国インドに逃避したり、PDF側に寝返ったりする事例が何件も報道されている。軍や警察を離脱した兵士や警察官は家族や親族への弾圧を恐れて顔にモザイクをかけ、実名や所属部隊を隠した状態で独立系メディアなどに登場している。

このような独立系メディアの報道に対して軍政側は「顔も出さず実名もないのは反軍政側のプロパガンダである証拠である」と反論している。

ロシア国内の状況に酷似

こうしたミャンマーの状況はウクライナに軍事侵攻したロシア国内の状況にある意味で似ている、ともいえるだろう。

ロシア国民はプーチン政権寄りのメディア報道によりウクライナで起きている戦闘や人権侵害の状況、ロシア軍兵士の犠牲などに関する情報へのアクセスを厳しく制限されており、実状は知らされていない。

とはいえインターネットのSNS上にあふれる実際の戦闘状況を伝える情報にはある程度触れることは可能で、若者を中心にプーチン政権への反感が高まり、国境を越えて隣国への脱出も続いているともいわれている。

ロシアの場合はウクライナという外国との戦闘であり、ミャンマーの軍と抵抗勢力という「内戦状態」とは単純に比較できないが、ロシアのウクライナに対する、そしてミャンマー軍政による一般市民への暴行、空爆、レイプそして虐殺という重大な人権侵害が起きている事態は同じで、国際社会による対応が喫緊の課題となっている。

ロシアの場合は国連、欧米などの各国による制裁、ウクライナへの経済支援、軍事支援などであり、ミャンマーのケースでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本などの関係国そして国連とその枠組みと多少の違いは存在する。

しかしロシアのプーチン政権に対してもミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官が率いる軍政に対しても、何らかの問題解決に向けた筋道を模索し続けなくてはならないことは変わらない。ウクライナでもミャンマーでも犠牲となっている多くの女性や子供たちといった非戦闘員の命を一人でも多く救うことが緊急の課題となっているからだ。

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[執筆者] 大塚智彦(フリージャーナリスト) 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など 【動画】国軍による僧院学校空爆のあとを見る