民主党政権が成立した16日、ネット上の話題を独占したのは、年金問題でも財源問題でもなく、鳩山首相が「会見を記者クラブ以外のジャーナリストにも開放する」という約束を破って、フリージャーナリストを締め出した事件だった。たとえば本稿を書いている17日午後の段階で、「はてなブックマーク」の人気エントリーで、民主党に関する8本の記事は、すべてこの「約束違反」に関するものだ。
もともと民主党は、定例会見を記者クラブ以外のジャーナリストにも開放してきた。鳩山由紀夫氏も、選挙前の記者会見でフリージャーナリストの上杉隆氏に「私が政権を取って官邸に入った場合、上杉さんにもオープンでございますので、どうぞお入りいただきたい」と答えている。ところがインターネット報道協会が首相官邸や民主党に送った出席要望書に回答はなく、首相会見には海外メディアの記者10人程度と雑誌記者5人の参加だけが許可された。
当初は「鳩山氏は嘘つきだ」と批判が盛り上がり、大手新聞社の経営者が民主党を脅したとか、平野博文官房長官が開放を妨害したといった説も流れたが、問題はそう単純ではないようだ。日経ビジネスによれば、日本雑誌記者会の事務局長を務める渡辺桂志氏は、首相会見の当日になって内閣官房内閣広報室から「今回は5人の記者にお入りいただこうと思っています」という電話を受けたという。この内閣広報室の「割り当て」については、鳩山氏はもちろん、平野博文官房長官も知らなかったようだ。
まだ真相はわからないが、この顛末は先日も紹介したNYタイムズ論文事件と似てはいないだろうか。政権交代直後の首相の就任会見というのは、おそらく日本の歴史に残る出来事だ。それがどう伝えられるかについて首相も官房長官も何も知らず、当日の朝になって官僚が取材する側に通知するというのは、メディア対策について民主党がいかにお粗末な認識しかもっていないかを示している。
結果的に「記者クラブの既得権を守りネットメディアを排除する鳩山政権」というイメージが広がってしまったダメージは小さくない。今の若い世代は、新聞は3割も取っていないし、テレビも半分ぐらいしか見ていない。彼らの情報源は、圧倒的にケータイとウェブなのだ。メディアが多様化した時代に幅広い国民の支持を得るには、官房長官が片手間で情報管理をやるのではなく、専門の「報道官」を官邸にも設け、メディア・リテラシーの高い政治家がメディア対策を行なう必要があるのではないか。