国と地方の長期債務残高は12年度末に932兆円(GDP比187%)だったが、22年度末には1244兆円(同220%)に拡大する見込みだ。金利が上昇すれば、利払い費も大幅に増加するという事情もある。

一方、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策による大量の国債購入で、金利の自由度は低下し、財政規律に対する「警告機能」は事実上失われてしまった。日銀の国債保有額は6月に全体の5割を超えたと推計されている。低金利環境が放漫な財政を助長するという面があるのは否めず、今後の課題でもある。

道半ばの成長戦略

アベノミクスで道半ばだったのは成長戦略だ。世界経済成長の追い風もあり、この10年間に雇用の改善は続いた。2012年12月に4.3%だった完全失業率は今年7月で2.6%に低下。有効求人倍率も0.83倍から1.24倍まで上昇している。

しかし、経済協力開発機構(OECD)によると、日本の平均賃金はドルベースでみて2012年の3万8058ドルから2020年の3万8515ドルまで1.2%しか上昇していない。その間、OECD平均は7.5%、米国は12.5%上昇している。

世界の主要国に比べて低い2%程度のインフレに苦しんでいるのは、賃金が上がらないことが大きな要因だ。アベノミクスでは、環太平洋連携協定(TPP)の締結などの成果もあったが、日本企業の国際競争力の低下は止まらず、時価総額でも世界の上位から消えてしまった。TOPIXをS&P500で割ったTS倍率は低いままだ。

7月10日に投開票された参院選は与党・自民党の圧勝となった。次の参院選は3年後の2025年夏。衆院議員の任期満了は25年10月で、岸田文雄首相にとって、国政選挙のない「黄金の3年」が到来する。

「フリーハンド」を得た岸田首相が財政健全化や金融正常化に動くのかが注目されているが、コロナやエネルギー対策が喫緊の課題である日本では、アベノミクス政策の微修正はできても、完全に転換することは難しい。「次の段階に進むことができるのは成長戦略に成功したときだ」と、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は指摘する。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

[ロイター]
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