<自らが任命したピーター・マンデルソン駐米大使の問題で英スターマー首相も窮地に>

僕はしばらく前、イギリスのキア・スターマー首相についての記事を書き、彼が不人気な首相であることは理解できるものの、その不人気の度合いは奇妙だと述べた。われながら鋭くて思慮深い主張で、けっこう自分でも満足できる記事になった。

僕は彼の弱点と失態を列挙したが、どれも壊滅的なほどではないと主張し、次いで彼の長所をいくつか挙げた (彼は外交政策でうまくやっていた) 。

ところが諸々の事態が起こる間に、僕はこの原稿を送れなくなってしまった。まずは、人権派弁護士として名を馳せたはずのスターマーが、異様なごますり旅行をすべく北京を訪問した。

さらに今度は、ピーター・マンデルソン卿を駐米大使に任命したのがほかならぬスターマーだったため、彼の判断力が非難の的になっている。マンデルソンを任命したのは、通常なら特定の政党に所属しないキャリア外交官が就くはずの重要職に大物政治家を抜擢するという、いわゆる「政治任用」だった。

スターマーの論理によれば、マンデルソンのような経験豊富な政治工作員こそ、米トランプ政権を理解して影響力を行使できる最適の人物だろう、ということだった。それはそうかもしれないが、マンデルソンは不名誉ながら、英ブレア政権時代に2度も閣僚ポストを追われた。彼は信用できない人物だったのだ。世間の評判どおり卑劣な人物ともいえるかもしれない。

不祥事後も上級職で復活

マンデルソンは疑いようもなく賢くて熟練した政治家だった。そうでなければ、あんなに何度も復活を遂げられなかっただろう。彼は前回の労働党政権の時代に閣僚を務めた(不祥事による2度の辞任から復活を遂げた)。

労働党が下野すると、マンデルソンはブリュッセルのEU本部にポストを得た。親EU派の政治家が自国でキャリアがついえた時にもらえる、高給で選挙を通る必要もない「特別職」の1つだ(イギリス国民がブレグジットに賛成票を投じた数ある理由のうちの1つもこれだ)。

マンデルソンが人からどう見られているかは、「暗黒のプリンス」というニックネームからもうかがい知ることができる。それでもスターマーは、国を代表する重要な地位にマンデルソンを復帰させる決断をした。

同性愛者だから捜査を免れていた?