<度重なる失政で国際的にも孤立していたエルドアン政権だが、日和見的立場のおかげで好機がもたらされている>

ロシアのウクライナ侵攻がトルコにチャンスをもたらしている。東西冷戦時代と同じく、トルコはロシアに対する防波堤だから、ではない。

現今の危機に伴うチャンスは、もっと複雑で厄介な現実の産物だ。そこには、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と与党が描く自立した大国という自国像、国内とシリアでのクルド人の分離・独立運動の脅威、欧米に対して募る失望と恨みといった要素が絡んでいる。

野望とトラウマが入り交じる動機に駆られて、エルドアンは危機の比較的早い時点でロシアのウラジーミル・プーチン大統領に手を差し伸べた。両首脳は複数回、電話で会談。シリアやリビア、おそらくはウクライナをめぐっても立場が異なるにもかかわらず、両国関係は深まり、トルコと欧米の間の不信感に拍車を掛ける形になった。

トルコは2019年にロシア製S-400地対空ミサイルシステムを配備した。これを受けてアメリカは翌年12月、トルコ当局の武器調達部門に対する制裁を発表している。トルコのNATO追放を求める声が再び高まり、エルドアン政権の外交政策に対する深刻な懸念も持ち上がった。

トルコは今も「西側」なのか。「東寄り」に移行しているのか。中東で、東地中海地域で、イスラム世界で、リーダーの座を目指しているのか――。これらの問いの答えは、どれも「イエス」だ。

わずか数カ月前までトルコは国際的に孤立していた。対欧州関係はキプロス問題やシリア難民の扱いをめぐって緊張化し、中東のほとんどの主要国と対立。アメリカのジョー・バイデン政権にはほぼ無視された。昨年後半になる頃には、深まる孤立や急激な通貨危機の中、自業自得のダメージを修復しようとしたが、焦りの色は隠せなかった。

どっちつかずが強みに

そこへきてウクライナ侵攻が発生した。トルコの反応については、2つの正反対の主張が浮上している。

一方によれば、エルドアンはウクライナの主権を支持し、殺傷能力のあるドローンを提供。2月末には、ボスポラス海峡の軍艦通過を制限する措置を発表した。これらはトルコが依然、西側の安全保障体制の重要な一部であることを示す証拠だという。

だがもう1つの主張では、トルコはそれほどウクライナ寄りではない。ロシアに経済制裁も領空飛行禁止措置も科しておらず、国内のエーゲ海沿いのリゾート地には、オリガルヒ(新興財閥)の超豪華ヨットが(おそらくトルコ政府の許可を得て)集まっていると、批判派は強く指摘する。

いずれにしても、トルコは「親ウクライナ」も「反プーチン」も徹底できない。この事実自体が、トルコが自身の影響力と主体性を強化しつつ、かつての役割を再び担うチャンスを生んでいる。

近年の不必要に攻撃的な外交政策のせいで忘れられがちだが、05~11年頃のトルコは中東で建設的な役割を果たそうとしており、その経済力を活用して地域内の各国と良好な関係を築いていた。

トルコは戦争終結の力になれるのか。人道回廊の設置をめぐる貢献は可能だし、仲介役に最適の国だろう。3月29日にイスタンブールで行われた停戦交渉は、希望の持てる一歩だ。

From Foreign Policy Magazine

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