<気温の上昇に比例して飽和水蒸気圧が上がるが、気候変動と異常気象は気温と大気中の水蒸気量という2つの要素によって加速する>

気候変動の影響を測定する上で、科学者たちが新しい指標に注目している。

アメリカのジョー・バイデン大統領は景気の回復に加えて、気候変動対策の推進を目指す巨額のインフラ投資計画を打ち出している。だがその有効性と方向性に疑問を抱き始めた人も少なくない。

先ごろ全米科学アカデミーの紀要に載った研究によれば、気候変動の影響を測る指標として気温ばかりに注目するのは正しくない。むしろ大気中に含まれる水蒸気量の変化も考慮すべきだという。なぜなら温室効果ガスの排出による「地表温度の上昇は地表の水分の蒸発を加速させる」からだ。また「気温の上昇に比例して飽和水蒸気圧は上がるから、大気が温かくなれば、それだけ多くの水蒸気を保持できる」という。

この論文の執筆に加わったカリフォルニア大学サンディエゴ校の気候学者ビーラバドラン・ラマナタンによれば、極端な異常気象で生じるエネルギー量と大気中の水蒸気量には一定の関係がある。

「気候変動を促す原動力は2つある。気温と湿度だ」。ラマナタンはAP通信の取材に応えて、そう語っている。「今までは気温の測定だけを温暖化の指標としてきた」が、実は湿度の上昇が異常気象の極端化(洪水や嵐、干ばつの被害の甚大化)につながっている可能性が高いという。

熱波や洪水の深刻化は避けられない

いずれにせよ、バイデン政権の法案がアメリカ議会で採択されるのを待たずに気候は変化していく。このままいけば熱波や洪水がもっとひどくなるのは避けられない。

アメリカ政府は昨年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2030年までに05年比で温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減すると公約したが、その実現に必要な予算はまだ確保できていない。

カリフォルニア大学のラマナタンは、湿度の測定が気候変動の議論に新たな知見をもたらし、流れを変えることを願っている。誰だって、蒸し暑いのは嫌いだから。

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