自粛期間はちょうど店の改装と重なっていた。いかにもホストクラブらしい白と黒を基調としたタイルにキラキラと照明が反射する店内、きらびやかなシャンデリアの裏で、彼は予算を増額し、より強力な換気システムを取り入れることを決めた。

彼の上司に当たるマネジャーのMUSASHIが言う。「ホストクラブやホストはきらきらしていて派手だけど、裏方は地味なんです」

入り口には靴の裏を消毒するためのマットを導入し、ホストもスタッフも全員がマスクを着用する。入り口、そしてテーブルごとに消毒用アルコールを置き、事あるごとに消毒する。マスクを着けてなるべく距離を取りながら、しかし客が満足する微妙な対人距離を保つ。マスクは客にも着用は求めるが、強制はしない。

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マネジャーのMUSASHI。店のコロナ感染対策を徹底している HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

唯一、絶対の方針は客に本名と連絡先の記入を求めることだ。万が一、感染者が出た場合、速やかに連絡を取るために、客の情報を管理する必要がある。「これが記入用の紙です。個人情報に当たるので、店には置かず別の場所で管理しています」と、蓮は「大切なお客様へ」と題したA5のチェックシートを見せてくれた。

「もし拒んだらどうするんですか?」と聞くと、蓮は「そのときはお引き取りいただくだけです。常連の方は皆さん協力してくれますし、むしろ、ここまでやるんですかと驚きますよ」と淡々と言った。

保健所長の高橋はこんなことを漏らしていた。

「換気を徹底し密着を避けるホストクラブはリスクの低減に取り組んでいると思います。私たちから見れば大勢でわいわい飲み食いをしていたり、換気が行き届いていなかったり、とほかにもハイリスクな業態のお店はたくさんあります」

ところが歌舞伎町を取り上げるメディアは、そんな努力はお構いなしに「夜の街」でどんちゃん騒ぎをする「けしからん」ホストを写真に収める。多くのメディアは「最低」に目を向けるが、成果や最良の実践には目を向けない。

※後編はこちら:【コロナルポ】若者が感染を広げているのか? 夜の街叩きに火を着けた専門家の「反省」

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