社長に対するプレゼンで1ページに1語だけというスライドを見せたとしたら、会議の出席者を戸惑わせるだけの結果になる可能性が高い。これは失敗の方程式だ。

会社には組織上の階層がある。重要な存在である人たちと、重要性の低い人たちがいる。ほとんどの場合、プレゼンは後者が前者に提案を示す形になる。下の立場にある人がスライドの1ページに「投資」とだけ示して、上の立場にある人に話を聞いてもらうことは期待できない。経営幹部が知りたいのは、なぜ投資が必要なのかという根拠なのだ。

上の立場にある人たちに提案を受け入れてもらうには、データや情報が必要だ。つまり裏付けになる数字や事実だ。タイミングや価格設定、見込まれる利益も示す必要がある。1つの言葉や写真だけのスライドを見せるのは不適切なやり方だ。

経過報告をしない

スティーブ・ジョブズのまさに際立った特徴の一つは、秘密を守り通す能力だった。製品やプロジェクトについて、完璧になるまで絶対に明かそうとしなかった。それまでの間、ジョブズは開発チームに完全な箝口令を敷いた。

ジョブズは、このやり方で結果を出した。手の内を明かさないことで「驚き」を生むことができたのだ。さらに重要な点として、競合他社に対してリードを保つことができた。新製品について公表すれば、すぐに他社も動き出すことになる。手の内を明かさないことが決定的に重要であることを、ジョブズは知っていた。

このやり方は自分のプレゼンにも使える、と思うかもしれない。プロジェクトや取り組みについて進捗状況の報告は最低限にとどめておき、最後にあっと驚かせるというやり方だ。

ここでも、私のアドバイスは「ジョブズを真似するべからず」だ。

会社内ではコミュニケーションが必須だ。社内で何がどう進んでいるのか、関係者全員が知っていなければならない。コミュニケーションの不足は、経営幹部と他部門の関係者の両方に問題を引き起こす。

上級の管理責任者たちは、何がどのように進んでいるのかを知る必要がある。そうした人たちに情報を伝えないわけにはいかない。プロジェクトが順調に進んでいるのなら、そのことを知らせるべきだ。自分が重要な決定を下そうとする際には、それについて説明する必要がある。 

上司に対して情報を伏せるのは、問題を引き起こす最大の早道だ。同僚も進捗状況を知る必要がある。それを知らせなければ、同僚をいら立たせるだけでなく、助力が得られないことにもなってしまう。

※第1回:名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった

※第2回:プレゼンは緊張したほうがいい、人前で話すのに恐怖を感じるのは当然だ


ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論

ティム・カルキンス 著

斉藤裕一 訳

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