脆弱な行政制度に拍車を掛けているのが韓国社会に顕著な地方主義だ。韓国大統領選では、ある地方で圧倒的に支持される候補者が別の地方では限られた支持しか得られないこともある。各政党がイデオロギーではなく、特定の地方との結び付きを強調するためだ。

同郷の候補者を支持する有権者の傾向は、具体的な政策ではなく、地方ごとのアイデンティティーを打ち出す政党の姿勢を後押しする。それがまた、不満を抱く人々のデモを増やす。

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「光復節」の示威行動 CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

「恨」に突き動かされて

抗議活動という文化には韓国特有の社会心理的要素、すなわち「恨(ハン)」も関わっている。恨とは、不正義や苦しみへの反応として生まれる深い悲しみと怒りの感情と定義できる。これは安心感や力の不在という認識がもたらす無力感の表れだ。

恨を理解するには、歴史的文脈を知ることが役立つ。朝鮮半島は数々の侵略にさらされ、長らく中国の影響下にあった。近年では1910~45年の日本統治、戦後の南北分断が精神に深い傷を与えた出来事として重くのしかかる。その産物が「文化的に特異で、極度に濃縮された激憤」である恨だ。

韓国のデモがこれほど特異である訳を理解するには、恨を考慮に入れることが欠かせない。感情を下位に置くことで理性と感情を切り離そうとする西洋のプラトン的伝統に基づいて韓国の政治と社会を捉えようとするなら、この国の政治の複雑さを完全に把握することはできず、ありのままの韓国社会を尊重することにもならない。

対立解消に際して、核となるのは恨だ。それを認識しなければ、デモが韓国社会に不可欠の要素である理由、そして行政の枠組みが脆弱ではあっても、持続的なデモを政治の機能不全の兆候と捉えるべきではない理由が見えてこない。

既存の政治参加メカニズムの改善や政党の制度強化は、韓国における国家と市民社会の関係向上にとって歓迎すべき事態だろう。だがこうした改善は、あくまでも政治決定に関して民衆により大きな権限を付与することを目的とすべきであり、デモの浸透に歯止めをかけるためであってはならない。

韓国の抗議文化は民衆の政治参加の在り方を映す鏡だ。そして朴の弾劾訴追が示すように、時には重要な結果を生み出すツールになる。

From thediplomat.com

<2019年8月27日号掲載>

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※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直轄・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。
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