Nupur Anand Tatiana Bautzer Michelle Price

[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米中間選挙で民主党が連邦議会上下両院の多数派を奪還したことを受け、ウォール街の大手銀行は今後、議会が監視強化に動く事態に備えている。銀行幹部やアナリストらは、民主党が生活費高騰の問題を重点的に追及し、各種手数料やクレジットカード金利、住宅ローンなどを巡り、銀行トップを議会に招致して証言を求めると予想している。

民主党は既に、トランプ大統領や政権関係者の事業取引に関する調査を進める準備に取りかかった。銀行業界ではこれに加え、ワシントンの勢力図が大きく変わったことで、人工知能(AI)を悪用した金融詐欺の取り締まり強化を目指す取り組みが進む可能性にも注目している。

法律関係者やアナリストの多くは、民主党が銀行の消費者向け金融サービスを調査すると見込む。対象となりそうなのは、不当な手数料や借り手を搾取する融資、住宅ローンなど、利用者の負担を増やす恐れがある消費者向け金融の慣行だ。ある銀行関係者は、規制や監督の緩和によって消費者保護が弱まり、金融機関の健全性にも影響が及んでいないかが検証されるのではないかとの見方を示した。また別の関係者2人は、銀行側が議会スタッフからの問い合わせ対応や公聴会の準備に、これまで以上の時間を割くことになるとみている。

トゥレーン大学フリーマン経営大学院のピーター・リッチウーティ教授は「銀行への規制を再び強化しようとする動きは確実に出てくるだろう。消費者保護政策も復活するかもしれない」と話した。

2024年には、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)やゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOをはじめとするウォール街の経営トップが、トランプ氏の当選を祝福し、企業活動に友好的な大統領として歓迎した。それからの2年間、銀行業界はトランプ政権下の規制当局から資本規制の緩和など大きな恩恵を受けてきた。

こうした中で銀行業界は来年1月から上下両院の支配権を握る民主党への対応を急いでいる。民主党は調査スタッフと召喚権限を持つことになり、金融機関各社はトランプ政権との関係についてリスク評価を進め、議会の関心を引きそうな分野を洗い出すとともに、一部の企業は有力な民主党議員との接触にも着手した。

メイヤー・ブラウン法律事務所のパートナー、トム・ペレス氏は先週、議会監視に関するイベントで「今から年末までの期間は極めて重要だ。事前に多くの対策を講じることができる」と述べた。また過去に届いた議会からの質問状にも十分対応する必要があると説明した上で「6カ月前に受け取った書簡が、来年1月には召喚状になるかもしれない」と警告した。

上院銀行委員会では、民主党のトップで長年ウォール街に厳しい姿勢を取ってきたエリザベス・ウォーレン議員が委員長の有力候補とみられている。下院金融サービス委員会では、マキシン・ウォーターズ議員が委員長復帰の最有力候補だ。

両氏はこれまでも住宅問題を含む生活費負担の増大に懸念を示してきたほか、トランプ政権が消費者向け金融保護を弱体化させたと批判してきた。政権側は、金融機関の活動を妨げてきた煩雑な規制を削減していると説明している。

ウォーターズ氏は以前に下院金融サービス委員会を率いていた際に、大手銀行のCEOを議会に招致して証言を求めた経緯がある。TDコーウェンのアナリストチームは、今回も同様の展開になると予想しており、与野党双方に支持が広がるクレジットカード金利の上限規制なども政策上のリスク要因に挙げて「民主党による議会完全支配によって、銀行CEOが議会で証言を求められる公算が高まり、各金融機関が公聴会の対象となるケースも増えるだろう」と記した。

<金融詐欺対策は追い風か>

もっとも銀行側は新たな政治環境を追い風にできる分野もあると考えている。その代表例が、テクノロジー企業やソーシャルメディア企業に対し、金融詐欺対策の強化を求める取り組みだ。関係者によると、銀行業界全体でこの課題への働きかけを強めている。

AI技術の急速な進化によって金融詐欺の手口はますます巧妙化しており、銀行利用者の被害リスクも高まっている。

ハンチントン・バンクシェアーズのスティーブン・スタイナーCEOはロイターに「顧客を守るための対策が必要だ」と述べた。同氏は、テクノロジー企業が詐欺グループと関係するアカウントを排除する取り組みにもっと責任を持つべきだと主張し、この問題には超党派の支持が得られる可能性が高いとの見方を示した。

またある銀行関係者は、AI開発やデータセンター建設への反発を踏まえ、業界としてAI関連の金融詐欺対策を議会で優先課題に押し上げたい考えだと語った。元規制当局関係者によると、この一環として、銀行側は電信送金に関する規制の見直しを議員らに働きかける可能性もある。

いずれにしても各銀行は今後、詐欺対策、クレジットカード手数料、AI、消費者保護など、議会から厳しい視線が向けられると見込まれるテーマについて、早い段階から議員との対話を進める構えだ。TDコーウェンのアナリストチームは「銀行業界にとって有利な法整備が続いた時代は、ひとまず終わりを迎えただろう」と述べた。

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