Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 6日 ロイター] - 米中間選挙で共和党が大敗したことへの市場の動揺は収まらず、6日の日経平均株価は大幅に下落している。高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」は好調な企業業績を背景とした税収増を当て込んでおり、株安が長引き国内外の景気が悪化すれば、その前提が揺らぎかねない。ロシアが日本たばこ産業(JT)傘下企業の現地生産拠点を一時的な管理下に置いたことも相場の重しとなっており、景気への懸念が強まれば、政権がさらなる財政拡張路線へ舵を切るとの見方もある。

<税収頼みの財政に影>

「過度に膨らんだAI(人工知能)、半導体への期待値に修正が入った」。財政政策に精通する政府関係者の一人は6日、ロイターの取材に株安の要因をこう分析した。3日に実施された米中間選挙では、トランプ大統領率いる共和党が大敗した。同関係者は、1)民主党が予想以上に議席を増やしたこと2)トランプ氏が早々に敗北を認め、政策が変更されるとの見方が広がったこと━━などが株価の大幅な下落を招いたと語った。

同関係者は、高市政権の政策への影響については、今後の市場動向を見極める必要があると話す。財務省は9月、2027年度予算の一般会計の概算要求総額が過去最高の約143兆円に上ったと発表した。高市氏が掲げる成長投資や飲食料品の消費減税、防衛力強化に伴う予算などで、歳出は大きく膨らむ見通しだ。

高市氏は特例公債(赤字国債)の新規発行額を40兆円程度とする方針を示している。政府内では、税外収入の活用に加え、税収の上振れに期待する声が高まっている。ただ、前出とは別の政府関係者は、株価の下落が続いて企業の資金調達や投資活動に影響が出れば、「税収が減っていくことになるだろう」と危惧した。

<看板政策への懸念も>

政権の看板政策の実効性に懸念を示す声もある。自民党の政務三役経験者は、高市氏が掲げる戦略17分野の成長投資を念頭に、「株安の基本原因は米の過剰投資に対する反動だ。そんな中、日本がさらにガンガン投資をするのか、と疑問視する声が民間企業にはある」とし、「民間は儲からない投資はしない。今回の株安でさらに投資に慎重になるだろう」と語った。

6日の衆院財務金融委員会で、高市氏は株安への認識を問われ、「確かにAI関連株、半導体などを中心にかなり下落していることも承知している」と述べた。一方で、「これが一時的なものに終わるのか、しばらく続くのか予断はできない」と説明。「とにかく日本経済を強くする、日本が強みをもつ技術をしっかり社会実装して日本の経済成長につなげていくことを考えている」と強調した。

<専門家は財政出動の拡大を警戒>

専門家は、株安が続いて景気悪化への懸念が高まれば、政権がさらなる財政出動に傾きかねないと指摘する。

野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏(元日銀審議委員)は、米長期金利の上昇と中間選挙後のAI規制強化への懸念が足元の株安につながっているとみる。日本の財政悪化への懸念が米長期金利の上昇に影響しているとも述べ、「日本の財政政策が株価下落に影響しているとも言える」と分析した。

その上で、今回の株価下落が関連企業の投資減速につながる可能性が高いと指摘する。世界規模でデータセンター(DC)を運営・管理する巨大企業は外部資金への依存度が高く、株価が下がれば社債や株式の発行による資金調達に影響が出かねないとの見立てだ。木内氏は「米国の実体経済を冷やす可能性が高い。日本からの輸出減少につながり、円高にもなりやすい」とし、景気悪化への懸念が広がれば、「高市政権が経済対策などさらなる財政出動に動く可能性がある」とも語った。

<「トランプバブル」崩壊なら影響必至>

ただ、高市氏がどこまで状況の変化に機敏に対応できるかは不透明だ。政府内では年末の予算編成や安全保障関連3文書の改定に向け、詰めの作業が進んでいる。与党内には「成長戦略などすでに方向性が決まっている政策はそのまま進めてもらわなければ困る」(自民党関係者)との声もある。政策を大きく転換すれば、世論の批判を招く材料になりかねないとの見立てだ。

一方、SBI証券チーフ債券ストラテジストの道家映二氏は、株安が続き、例えば政権が拡充を進めてきたNISA(少額投資非課税制度)への影響が顕在化すれば、「内閣支持率が下落する可能性がある」とも指摘する。今後の株価動向は見通せないものの、日本経済への影響の度合いをどう判断し、政策に反映させるのか、高市政権は難しい舵取りを迫られそうだ。

財政政策に精通する前出の政府関係者は「日本はこの間、AI・半導体、DC投資などトランプ流の経済政策に賭けてきた」とし、こう語った。「良くも悪くも一度掲げた政策へのこだわりが強く、状況に応じた軌道修正が利きづらいのが高市政権の特徴だが、日本が享受してきた『トランプバブル』が崩壊すれば影響を被るのは必至だ」

(鬼原民幸、竹本能文 編集:久保信博)

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