Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米中間選挙で民主党が連邦議会上下両院の多数派を奪還したことを受け、市場では予算協議や将来の政府債務上限交渉を含めた財政運営を巡る与野党対立のリスクに注目が集まっている。そうした政治的駆け引きが金融市場を動揺させる恐れがあるからだ。
過去の債務上限に関する対立では、議会が財政政策を巡る交渉材料として政府借り入れの上限を利用し、期限直前まで協議がもつれ込んだ経緯がある。
今年は米政府債務残高が40兆ドルを突破し、財政への懸念が市場の重荷となって米国債への信認にも影響を及ぼしてきた点も無視できない。選挙結果を受け、市場関係者が提示したのは、財政赤字を拡大させるシナリオと抑制するシナリオの双方だった。
<デフォルト確率乏しいが市場は警戒>
政府が債務上限に到達するのは来年終盤以降になる公算が大きい。ただ民主党はいわゆる「Xデー」を予算やその他の交渉で共和党に対する交渉材料として活用できる立場となる。債務上限が引き上げられなければ、財務省による国債償還や政府債務の支払いが脅かされる可能性がある。
資産運用会社グレンメドの投資戦略担当バイスプレジデント、マイケル・レイノルズ氏は「民主党は債務上限問題について有力な交渉カードを手にすることになる。デフォルト(債務不履行)の可能性は極めて低いとみている。しかし政治的な駆け引きが長引くほど、市場はそうした事態を警戒するようになる」と述べた。
当面の焦点は、連邦政府のつなぎ予算の期限となる12月11日で、議会はそれまでに政府資金手当てで合意する必要がある。市場関係者の間では、民主党主導の新議会が来年1月初旬に発足する前に、共和党がこの期限を利用して債務上限引き上げを進める可能性が指摘されているが、実現を疑問視する声もある。
カナダの資産運用会社マッケンジー・フィナンシャルのチーフ債券ストラテジスト、ダスティン・リード氏は「政権は任期切れ前の議会会期中に債務上限を引き上げたいだろう。しかし民主党の勝利規模を踏まえると、その実現は難しい」と語った。
<対立長期化も>
年内に議会が債務上限問題を解決できなければ、市場への影響は長期化してもおかしくない。カナダ金融大手BMOの米金利ストラテジスト、ベイル・ハートマン氏はリポートで「来年には金融市場が長期的な債務上限対立に直面する可能性がある」と指摘。米国債の格下げリスクや、想定されるXデー前後での価格のゆがみ、財務省が特別措置を講じる過程で現金市場やレポ市場の変動性が高まる恐れがあるとの見方を示した。
UBSのアナリストチームは、民主党が債務上限交渉の見返りとして、政府運営の低所得者向け医療保障「メディケイド」や住宅支援策など国内政策分野での制度変更を求める可能性があると分析。その結果として成立する合意が景気刺激的な内容となり、超党派の米議会予算局(CBO)の基準シナリオよりも財政赤字を拡大させる事態があり得ると言及した。
一方で、民主党がトランプ政権による歳出拡大や減税構想に一定の歯止めをかける展開も議論されている。ポトマック・ファンド・マネジメントのエコノミスト、ショーン・スナイダー氏は「ねじれ議会となれば、大規模な財政法案の成立は難しくなる。特に超党派の支持を欠く歳出案件は進みにくくなる」と説明した。
格付け会社ムーディーズは選挙後のリポートで、義務的支出の増加や人口動態要因、利払い負担の拡大など、債務増加の主因が引き続き存在することから、米国の財政軌道は大きく変化しないとの見方を示した。
ブラックロック・インベスト・インスティテュートは、政治的な膠着状態が財政の方向性を大きく変えることはないとしつつ「ねじれ議会は予算協議の対立や政府機関閉鎖のリスクを高める」と警告した。