ただし、専門家は、この結果を人間の肌の若返りに直接結びつけるのは早計だと指摘する。
米マウントサイナイ医科大学の皮膚科医、デブラ・ジャリマンは、失われた皮下脂肪を回復させることは、顔のふっくらとした印象を取り戻すうえで重要だが、効果は脂肪の量だけでなく、どこに脂肪がつくかにも左右されると説明する。
「加齢によって顔の脂肪は下垂し、あごの下や首、フェイスラインなどに偏って蓄積する」
また、ビタミンD不足を解消したり、血中濃度を正常範囲以上に高めたりすることで、失われた皮下脂肪が回復するという科学的根拠はないとジャリマンは強調する。
「高齢者を対象とした通常のビタミンDの臨床試験では、加齢によって失われた脂肪の回復は確認されていない。ただし、顔や皮膚の脂肪の再生を直接調べた研究ではない」
そもそも、一般的なビタミンDサプリメントの摂取と、カルシポトリオールによるビタミンD受容体の活性化は異なる。ビタミンDは肝臓と腎臓で段階的に変換されて初めて、受容体を活性化できるからだ。
ジャリマンは、マウスで確認された老化抑制効果が人間にも当てはまるとは限らず、臨床試験では期待した効果が得られないことも多いと指摘する。
米フラットアイアン皮膚科・美容外科研究所のエリック・ピーターソンも、マウスと人間では皮膚の厚さや傷の治り方、紫外線を浴びる年数などが大きく異なると説明する。「安全な投与量で、人間の皮膚でも有効かどうかを見極める必要がある」
ピーターソンは、血液検査で不足が確認された場合にビタミンDを補うのはよいが、顔のふっくら感が戻ると期待すべきではないと助言する。「日焼け止めやレチノイドの使用、皮膚科医による診察が、効果の裏付けがある対策だ。今回の研究は注目に値するが、関連製品に飛びつくのはまだ早すぎる」
Reference
Zhang et al. Counteracting vitamin D receptor signaling deficiency rescues subcutaneous adipose loss in aging.
DOI:10.1093/procel/pwag045