[4日 ロイター] - 米中間選挙でトランプ大統領率いる共和党が大敗したことで、米国の貿易相手国の一部はトランプ氏の対決的な通商政策へ異議を唱えようとの意欲を強めてもおかしくない。ただし、政治基盤が弱まったトランプ氏をむやみに刺激すれば、かえって姿勢が強硬化したり、行動が予測しにくくなったりしかねず、各国には慎重な対応が求められそうだ。
民主党は中間選挙で上院、下院ともに過半数を獲得。有権者は、インフレ長期化の原因がイラン戦争や関税政策にあるとしてトランプ氏に厳しい判断を下した。
この結果を受け、中国は継続中の通商交渉で優位に立ったと受け止める可能性がある。またアジアの同盟国は数千億ドル規模の対米投資公約の履行ペースを緩めるかもしれず、欧州にとっては未解決の通商問題の先行きが見通しやすくなるだろう。
もっとも貿易相手国の間では、依然として先行きは楽観できないとの見方もある。世界貿易を混乱させてきた関税政策について、有権者の判断を受け入れる姿勢がトランプ氏にはほとんど見られないためだ。
欧州議会貿易委員会のベルント・ランゲ委員長は「米国の保護主義が簡単に消えることはない。弱体化したトランプ氏は、むしろさらに攻撃的かつ予測不能になる恐れがある。レームダック(死に体の指導者)は、たちまち『怒れるアヒル(アングリーダック)』に変わりかねない」と語った。
インドの元外交官でシンクタンク、ゲートウェイ・ハウスのラジブ・バティア氏も「民主党の勝利が、トランプ氏を各国に対してより融和的にするとは限らない」とくぎを刺した。
<同盟国は負担軽減に期待>
水面下で負担の軽減を期待している諸国の中には、米国の主要なアジア同盟国も含まれる。日本は5500億ドル、韓国は3500億ドルの対米投資を約束しており、これらはトランプ氏への配慮を目的としたものだった。
ソウルの西江大学のホ・ユン教授(経済学)は「民主党は、こうした投資公約が同盟国に事実上強要されたものだと認識しているようだ」と述べ、各国が公約履行への圧力を以前ほど感じなくなる可能性があるとの見方を示した。トランプ氏は最近、投資公約を十分に果たしていないとみなす国々の中で特に韓国を槍玉に挙げていた。直近では、トランプ氏が韓国はアラスカLNG(液化天然ガス)パイプライン事業への資金提供に同意したと主張したのに対し、韓国政府は反論した。
韓国国立外交院のバン・ギルジュ教授は、こうした大型案件に対する米議会の監視が強まれば、韓国政府は計画を再検討するための時間的余裕を得られると期待する。
一方上智大学総合グローバル学部の前嶋和弘教授は、同盟国が簡単に公約を撤回できるわけではないと指摘。日本の対応が遅れれば、追加関税を求める声が再び強まりかねないと警告した。
<欧州に残る火種、インドは様子見も>
欧州では一連の合意によって米国との通商摩擦はおおむね緩和されており、トランプ政権による関税攻勢の影響も現時点では限定されている。しかし米巨大IT企業に対するデジタルサービス税を導入する欧州諸国への報復措置や、欧州航空機大手エアバスに対する30億ユーロの公的融資を巡る問題など、火種はなお消えていない。
米国との通商協定交渉を続けるインドの場合、今回の中間選挙結果が様子見姿勢を強める理由になり得る。インドの商工相は今月初め、米インド通商協定の第1段階について条文化作業が最終段階に入ったと述べたが、インドは競合輸出国に対して優位性を確保できる場合にのみ合意するとの従来方針も改めて強調した。
<白紙委任なし>
米国最大の競争相手である中国とトランプ政権との通商休戦合意は、来年1月に期限を迎える。中国政府は、トランプ氏の政治的求心力低下を利用して交渉上の立場を強めようとする可能性がある一方で、米議会の監視が強まりトランプ氏から譲歩を引き出しにくくなる事態も想定される。トランプ氏はこれまで習近平国家主席との関係改善に力を注いできたが、民主党が主導する議会は、今後の対中取引で政権が譲歩材料を提示する余地を狭める可能性がある。
オーストラリアのコリナ・エコノミック・アドバイザリーのエコノミスト、ソール・エスレイク氏は「習主席は、今回の結果によってトランプ氏の権威が大きく損なわれたことを認識し、その状況をどう活用できるかを考えるだろう」と語った。
ナティクシスのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は「民主党はトランプ氏に対し、中国との取引で白紙委任状を与えることはない」と断言。民主党はこれまでも、人工知能(AI)など重要分野で具体的成果に乏しいとして、トランプ氏と習氏の首脳会談を批判してきたと述べた。
同氏によれば、民主党が主導する議会は、AIや半導体関連の技術輸出規制強化やサプライチェーンの監視強化を支持する公算が大きく、トランプ氏がこれらの成長分野で譲歩する余地は狭まる。
中国外務省の毛寧報道局長は4日に「中間選挙は米国の内政問題だ」と述べた上で、中国としては今後も米国との相違点を適切に管理しながら、協力関係の拡大を目指していくとの方針を示した。