トランプ米大統領は、イランの体制転換を目指して戦争に踏み切った。しかし結局揺らいだのはイラン政権ではなく、むしろワシントンにおける自身の政治基盤だった。戦争への疲労感と燃料価格高騰に不満を募らせた有権者は、中間選挙で民主党に議会の主導権を与えた。

選挙の結果として立場が弱まったトランプ氏は、交渉による出口戦略を模索するか、さらに危険な軍事的エスカレーションに踏み切るかという選択を迫られている。

イランとその同盟勢力は、この選挙結果を戦争に対する米国民の審判として歓迎。ペルシャ湾岸諸国の政府関係者の間では、今後トランプ氏がどの方向へ進むのかを見極めようとして緊張感が広がった。

米国の湾岸地域の同盟国に近い関係者の1人は、選挙結果を受けて「イランは米国で『体制転換』を成功させた」と皮肉った。複数の関係者は、民主党の圧勝規模は湾岸諸国の当局者らが言葉を失うほど衝撃的だったと明かす。

湾岸地域の政府関係筋2人は、民主党が議会を掌握して軍事行動を制約できるようになったことで、トランプ氏には交渉妥結を目指す動機が強まり、全面的な対イラン攻撃の可能性は後退したとの見方を示した。中国が仲介に向けた動きを強める中で、核施設への限定的な追加攻撃で目的達成を宣言し、戦争に区切りをつけるシナリオも考えられる。

ただしイラン側にとって明確な勝利主張が可能で、トランプ氏が敗者のように映る合意となれば、慎重さではなく無謀な行動を招く可能性もあると湾岸地域の専門家らは警告する。

中間選挙結果に先立つ10月27日には、イスラエルで戦争のもう1人の主導者だったネタニヤフ首相が打撃を受けた。総選挙で同氏率いる右派陣営の獲得議席は120議席中53議席にとどまり、過半数に8議席届かず、政権維持に向けて厳しい状況に追い込まれている。

政治的苦境に立たされたトランプ氏とネタニヤフ氏という2人の指導者は、それぞれ自身の政治生命と戦争の行方の結び付きが一段と強まっている。そのため、本来は避けるべきエスカレーションを、自らの政治的困難を打開する手段と考えるかもしれない。たとえこうしたエスカレーションが非合理的な判断であったとしても、現実化する危険性は小さくない。

誤算のリスク