Saqib Iqbal Ahmed Dhara Ranasinghe Ankur Banerjee
[ニューヨーク 4日 ロイター] - 関税やイラン戦争など、共和党が支配する議会の抵抗を受けずにトランプ米政権が進めた大幅な政策転換は過去2年にわたり、世界の市場を繰り返し揺さぶってきた。だが、米中間選挙での民主党の歴史的な圧勝を受け、4日の市場は上昇した。
その背景には、政権と議会の「ねじれ」による政治の停滞が、イラン戦争などを巡り最悪の事態の一部を回避できるとの見方があると投資家は指摘する。一方、経済成長と企業利益をけん引してきた人工知能(AI)インフラの整備に対する反発など、新たな懸念も浮上している。
ネーションワイドのチーフマーケットストラテジスト、マーク・ハケット氏は「政治の膠着は市場の味方だ」と指摘。「両党が今何を言っていようと、今後2年間は必要不可欠でない限り、法案が成立する可能性は極めて低い。それによって投資環境の予見可能性は高まる」と述べた。
市場はここ数週間、選挙が財政見通しやAIの規制環境、イラン戦争にどう影響するかを巡り神経質になっていた。こうした問題は足元で物価を押し上げ、債券・株式市場に混乱を引き起こしてきた。投資家は今回の結果を、リスクを積み増す「お墨付き」と受け止めているという。
選挙結果を受け、米主要株価3指数はいずれも上昇し、米国債価格も上昇した。投資家は政権と議会のねじれが政府支出を抑えるほか、AI規制によって成長が鈍化し、利上げの必要性が低下する可能性もあると見込んでいる。
選挙結果は外交政策にも影響を及ぼす可能性がある。バンス副大統領はトランプ大統領が進めた対イラン戦争と距離を置き、その意義に疑問を呈するとともに、中間選挙での共和党の敗北は全面的にイラン戦争に原因があったとの認識を示した。
ポトマック・ファンド・マネジメントのエコノミックストラテジスト、ショーン・スナイダー氏は「投資家は緊張緩和を織り込み始めているのかもしれない」と述べた。
投資家はまた、政治情勢の変化は業種によってプラスにもマイナスにも作用し得ると指摘した。
エドワード・ジョーンズのシニアストラテジスト、アンジェロ・クルカファス氏は、医療保険制度改革法(ACA)に言及し、「ACAの補助金延長に超党派の支持が集まれば、マネージドケア事業者や病院が恩恵を受ける可能性がある」と述べた。一方で「金融の一角や防衛、暗号資産(仮想通貨)など、大幅な規制緩和や政策面の追い風を当てにしている業種は、これまでほど有利でない環境に直面する可能性がある」と語った。
<AIインフラ整備>
選挙前は、規制当局による監視の強化がAI部門の急成長を妨げかねないとの懸念が投資家心理を圧迫していた。世論調査ではデータセンター建設やAIに反対する有権者が増えており、投資家は民主党が支配する議会が同部門への監視を強めると予想している。
ただ、市場の初期反応は一部で懸念されていたほど深刻ではなかったと投資家は指摘する。インフラ整備のための借り入れコストを投資家が懸念し始めていた矢先に、民主党の圧力によりデータセンター建設のペースが鈍化する可能性がある。
4日の米国株式市場では、潤沢な資金を持つ大規模クラウド事業者のアマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、アルファベットなどが上昇。一方、データセンター運営のIREN、アプライド・デジタル、コア・サイエンティフィックは下落した。
ネーションワイドのハケット氏は「市場は支出の伸びがもっと合理的になることを求めてきたが、今やその可能性が高まったと言っているのだ」と述べた。
ジェフリーズのストラテジストは、データセンター関連で注視する5州全ての知事選で民主党が勝利したことで、AIを巡る政治的な安定性は低下するどころか高まる可能性があると指摘した。新知事らは全面的な禁止ではなく、一定の歯止めを設ける方針を取ると予想している。
<財政への影響>
米国債利回りは低下した。トランプ氏の共和党に厳しい審判が下り、米政権がイラン戦争の終結を目指す可能性が高まったことで、原油価格も下落した。
クレセット・キャピタルのチーフマーケットストラテジスト、ジョセフ・ザイドル氏はこの日の原油安について「市場は『イラン戦争は極めて不人気であり、今やっていることを見直す必要がある』と言っている」と指摘。下落傾向が続けば「インフレ圧力が大幅に和らぎ始め、米連邦準備理事会(FRB)への圧力も弱まる」と述べた。
ソシエテ・ジェネラルの新興国調査グローバル責任者フェニックス・カレン氏は、民主党による議会支配は財政政策への監視強化につながり、トランプ氏が歳出拡大でできることを制限する可能性が高いと述べた。
「財政政策への制約が一段と強まり、米国債利回りへの上昇圧力を幾分和らげるはずだ」とした。
それでも、政権と議会のねじれは、予算を巡る対立や政府閉鎖のリスクを高める。議会は2027会計年度の歳出を巡る議論を中間選挙後に先送りしており、12月11日が合意の期限となっている。
選挙結果に対する市場の初期反応は安堵だったが、投資家にはなお多くの懸念材料がある。
レイモンド・ジェームズの米政策アナリスト、エド・ミルズ氏はリポートで「大統領権限による措置の不確実性、歳出を巡る対立、地政学リスク、AI政策の不透明感、そして間もなく始まる28年大統領選の選挙戦が、大きな懸念の壁となる」と記した。