Dhara Ranasinghe Ankur Banerjee
[ロンドン 4日 ロイター] - 米中間選挙での民主党の圧勝は、市場にとって新たな波乱要因となった。市場は既に、イラン戦争の余波に加え、成長とインフレを押し上げてきたAI(人工知能)ブーム、そして米国の債務拡大への対応に追われている。
投資家は市場の変動が続くとみて身構えている。特に2つの分野に注目が集まっている。今年に入り原油価格を70%押し上げてきたイラン戦争の行方と、米国の財政支出を巡る激しい論争だ。
約6000億ドルの資産を運用するRBCブルーベイ・アセット・マネジメントのマーケット戦略責任者マイク・ベル氏は「市場にとって最大の潜在的な影響は、中間選挙という障害がなくなった今、トランプ大統領が中東でのエスカレーションに踏み切ると決断した場合だろう。エスカレーションが続きエネルギー価格が上昇すれば、株式と債券が同時に打撃を受ける可能性がある」と語った。
イラン戦争が続く中、原油価格は1バレル=100ドルを超える水準で高止まりし、消費者や企業の燃料コストを押し上げている。一方、中央銀行は、より大幅な利上げを迫られるような広範な物価急騰への波及リスクに警戒を強めている。
米連邦準備理事会(FRB)は、5年以上にわたってインフレ目標を達成できていない。ユーロ圏でも、10月のインフレ率はエネルギー高を背景に4%と3年ぶりの高水準に上昇した。今後数カ月でさらに上がる見通しだ。これにより、12月の欧州中央銀行(ECB)の利上げを巡る市場の観測が改めて裏付けられた。
アナリストによると、トランプ氏が外交政策の主導権を握り続けるため、地政学的リスクは引き続き高いという。
イラン戦争に加え、今年は、米国によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束や、デンマーク自治領グリーンランドを巡ってトランプ氏が欧州の同盟国に関税で脅しをかけたことも、投資家の不意を突いた。
ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「トランプ政権の残り2年間は、外交政策を巡る大きな混乱に備えなければならないだろう」と述べた。
<AI投資から債務へ>
民主党の勝利を受けて規制面での監視強化がAI分野の急成長を妨げかねないとの懸念が、市場の当面の焦点となった。
世論調査では、民主党支持者がAIへの規制強化を支持していることが示されており、投資家は民主党が多数派を占める議会が同分野への監視を強めると予想している。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフグローバルストラテジスト、シーマ・シャー氏は「AIは米国の成長ストーリーの極めて重要な部分を占めている。だから、どの政党が政権を握ろうとも、投資の拡大を支えつつコスト面の懸念に配慮するという、両方のいいとこ取りを目指すだろう」と述べた。同氏は、第2次世界大戦終結以降、S&P株価指数が中間選挙の1年後にはいずれの場合も上昇していると指摘した。
それでも投資家は、市場の底堅さについて神経質になってきている。AIの設備投資急増と多額の債務を抱える政府が、金利を数十年ぶりの高水準に押し上げ、市場の弱点を露呈させてきた。
シャー氏は、選挙結果を受けて一段と制約を受ける可能性がある財政政策の行方を注視すると付け加えた。
アナリストからは、共和党が勝利した場合に米成人に5000ドルの小切手を配るというトランプ氏の公約が実現しないことへの安堵が示された。
ソシエテ・ジェネラルの新興国リサーチ世界責任者フェニックス・カレン氏は、民主党が議会を支配すれば、財政政策への監視が強まり、トランプ氏が支出拡大の面でできることに歯止めがかかる公算が大きいと指摘。「それは財政政策により厳しい制約を課すものであり、米国債利回りへの圧力を幾分和らげる助けになるはずだ」と語った。
40兆ドルを超える米国の債務残高への懸念は、今年の国債利回りを押し上げる一因となってきた。
議会は2027会計年度の支出を巡る激しい論争を中間選挙後に先送りしており、資金調達合意に達するための期限を12月11日に設定した。
債務上限引き上げの期限は2027年後半まで到来しない見通しだが、民主党はいわゆる「Xデート」を、支出・税制政策を巡る共和党との交渉の切り札として使える可能性がある。借り入れ上限への対応に向けた賛成票と引き換えに、譲歩を迫るものだ。
シャー氏は「市場の変動は続くとみている。今後1年は手に汗握る展開になるだろう」と述べた。